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p.70 抽出テキスト

が,中年以降で同様の所見を呈してくる.本人もしくは家系内にこのような臨床所見を認めた場合,ファブリー病を疑い心エコー法が必要となる.

3.3 判読

3.3.1 左室肥大

ファブリー病において特徴的な所見は進行性の左室肥大であり,断層法で最大壁厚および肥大の形式を評価する.肥大の程度は壁厚が12 mm程度の軽度なものから20 mmを超える高度なものまでさまざまである.男性では心室中隔あるいは下壁基部(後壁)に肥大が生じることが多く,女性ではびまん性の肥大様式をとることが多い.また,乳頭筋肥大の頻度が高く,後壁基部の長軸方向ストレイン値が低下することが知られている(表50) 386).

マインツ重症度スコア指数(Mainz severity score index [MSSI]:一般・神経系・心血管系・腎でそれぞれ点数が加算される疾患病勢を反映するスコア) 387)で用いられている指標のうち,最も点数の高い指標が心筋壁肥厚の程度であり,最大壁厚が11.5 ~15 mmで8点,15 mm超で12点が加算されることからも,最大壁厚の正確な計測が必要である.心臓MRIは経胸壁心エコー法が画像不良のために最大壁厚の評価困難な場合に推奨される(表50).

また,酵素補充療法により左室心筋重量が有意に減少することが報告されていることから388),酵素補充療法後の治療効果判定において,経胸壁心エコー法による心肥大のフォローが年1回必要である(表50). 3.3.2 左室機能障害

肥大に伴う左室拡張機能障害の進行を認め,左房拡大,肺高血圧の出現などの左心不全所見を呈する.また,スフィンゴ糖脂質は弁にも沈着するため,弁機能不全が生じる.僧帽弁に所見がみられることが多く,MRを呈する356, 389).病態が進行すると,左室収縮機能障害が顕在化し,拡張型心筋症様のびまん性壁運動低下を呈する.

3.3.3 鑑別診断

二次性肥大型心筋症の原因としてファブリー病が最多であり,日本人の心肥大患者におけるファブリー病の有病率は1~3%との報告がある390).男性の肥大型心筋症に対する濾紙血法のGLA活性測定をスクリーニング検査として検討してもよい.一方,女性患者では遺伝子変異の同定が唯一の診断法であるため,家族歴やファブリー病特有の症状の有無から本疾患を疑うことが重要である.

4 特発性拘束型心筋症

4.1 適応

WHO/ISFC(1995年)の心筋症の定義と分類による報告では,拘束型心筋症は「心筋症」に属する特発性拘束型心筋症と二次性心筋症に属する心アミロイドーシス,ファブリー病,心サルコイドーシス,ヘモクロマトーシス,心内膜線維弾性症などに大別される373).日本循環器学会/日本心不全学会の「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」では,心臓の形態・機能異常,家族歴や遺伝子変異の有無,二次性心筋症を鑑別したうえで,特発性拘束型心筋症を診断すべきとしている349).

拘束型心筋症は,左室拡張機能障害を主体とし,硬い左室,左室拡大や肥大の欠如,比較的保たれた左室収縮機能を特徴とする391, 392).軽症例では無症状のこともあるが,重症例では労作性呼吸困難,起座呼吸など左心不全を引き起こし,さらに右房圧上昇による頚静脈怒張,うっ血肝,腹水,下腿浮腫などの右心不全症状がみられる.その他,心房細動や上室性不整脈による動悸,ならびに左室・左房内血栓による塞栓症や突然死を引き起こすこともある.聴診ではIV音が聴取され,重症例ではIII音を伴う.また,MR・TR雑音が聴かれる.胸部X線写真は,軽症では正常であるが,通常左房拡大を認め,進行すると左

表50 ファブリー病を疑う心肥大症例における経胸壁心エ

コー法(TTE) の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

TTE により,左室心筋最大壁厚の正確な計測を行う. I B TTE が画像不良の症例では,心臓MRIによる肥大の評価を行う. I C酵素補充療法中のファブリー病患者に対し,TTE による年1 回の経過観察を行う. I C TTE による乳頭筋肥大の評価を考慮する. IIa B TTE による後壁基部の壁運動もしくはストレイン値の限局的な低下の評価を考慮する. IIa B