p.66 抽出テキスト
2.1.1 心形態からの二次性心筋症の鑑別 拡張型心筋症は,左室収縮不全と左室内腔の拡大を特徴とする.心エコー法による心形態の観察は,二次性心筋症の鑑別に役立つことがある.心エコー法単独による最終診断は困難であり,正確な診断には,心臓MRI,心筋シンチグラフィ,心筋生検など他の診断ツールと組み合わせる必要がある.しかし現在使用し得る診断ツールでは,二次性心筋症の鑑別を確実に行うことは困難である.特発性拡張型心筋症と考えられても,二次性心筋症を示唆するサインが患者から発せられていないか,常に観察を怠らないことが重要である. 2.1.2 鑑別すべき他の心筋症 原因が特定できない特発性心筋症のなかで,構造的・機能的変化が拡張型心筋症に類似しているために,特に鑑別 症の診断においては種々の二次性心筋症,すなわち原因が明らかな特定心筋症を除外する必要がある(表46) 349).そ れらをふまえて,拡張型心筋症とさらに鑑別が必要な心筋症として,拡張相へ移行した肥大型心筋症である拡張相肥大型心筋症や不整脈原性右室心筋症があげられる.とくに拡張相肥大型心筋症は,経過を知らなければ,診断時の形態的特徴から拡張型心筋症と鑑別するのが困難であることがしばしば経験される. 心エコー法を用いて,拡張型心筋症の定義である「びまん性に収縮機能が低下し,拡大した心室」をベッドサイドでも簡便に診断できることより,心エコー法は特発性拡張型心筋症や特定心筋症の診断の際に必須の検査である.どの程度の壁運動の低下や左室拡大をもって拡張型心筋症と診断するかについて明確な指標はない. 表46 拡張型心筋症と鑑別すべき主な二次性心筋症(特定心筋症) 心筋の異常による心筋症虚血性心疾患心筋梗塞,スタニング,ハイバネーション,微小循環障害ストレスなどたこつぼ心筋症妊娠周産期心筋症自己免疫疾患関節リウマチ,多発性筋炎,SLE,混合性結合組織病など 心毒性物質習慣性物質アルコール 重金属銅,鉄,鉛,コバルト,水銀薬剤抗癌剤,NSAIDs,麻酔薬,抗ウイルス薬など 炎症感染性ウイルス性,非ウイルス性心筋炎 非感染性サルコイドーシス 浸潤性疾患アミロイドーシス,ヘモクロマトーシス内分泌疾患甲状腺機能亢進症,クッシング病,褐色細胞腫,副腎不全,成長ホルモン分泌異常など代謝疾患糖尿病,肥満 先天性酵素異常ライソゾーム病ファブリー病 糖原病ポンぺ病ムコ多糖症ハーラー症候群,ハンター症候群 神経筋疾患,全身症候性筋ジストロフィー,ラミノパチー,ミトコンドリア病など機械的負荷(圧負荷,容量負荷)による心筋症高血圧高血圧性心疾患 心臓の構造異常先天性先天性弁膜症,心房中隔欠損症,その他の先天性心疾患 後天性弁膜症 心内膜の異常好酸球増多心内膜炎(レフレル症候群),心内膜弾性線維症高心拍出によるもの重症貧血,甲状腺機能亢進症,骨パジェット病,動静脈瘻,脚気心不整脈による心筋症 徐脈性洞不全症候群,房室ブロックなど頻拍性心房細動,心房頻拍など (日本循環器学会/日本心不全学会.2018 349)より)