p.65 抽出テキスト
1 適応 拡張型心筋症に特徴的な自覚症状はなく,無症候性に経過することも多い.ときに心不全による臓器うっ血や心拍出量低下に伴う症状がみられる.自覚症状として呼吸困難,浮腫,易疲労感,食思不振や悪心がみられる.さらに不整脈や塞栓症による症状・症候が出現する.不整脈は,洞性頻脈,心室性不整脈,心房細動が多くみられる.心室頻拍あるいは徐脈性不整脈は,めまいや失神をもたらし突然死もまれではない.拡張型心筋症が疑われる際には,経胸壁心エコー法が適応となる.表45 349)に拡張型心筋症における経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを示す. 2 判読 拡張型心筋症は,「左室のびまん性収縮機能障害と左室拡大を特徴とする疾患群」と定義される349).診断の確定には,基礎疾患ないし全身性の異常に続発し,類似した病態を示す「二次性心筋症」(世界保健機関[WHO]/国際心臓連合[ISFC]の「特定心筋疾患」)に該当する疾患373)を除外する. 2.1 拡張型心筋症と鑑別すべき二次性心筋症 AHA分類で示されているように拡張型心筋症は形態学的および機能学的な分類に基づくものであり,病因論的には遺伝性と後天性の混合した疾患群である374).臨床的には,「左室収縮機能障害」と「左室拡大」をきたす類似の疾患は多く存在する.したがって,いわゆる特発性の拡張型心筋 第10章 拡張型心筋症 表45 拡張型心筋症における経胸壁心エコー法(TTE)の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 拡張型心筋症が疑われる患者において,心機能,左室壁運動,弁膜症,右室機能,肺高血圧の評価をTTE で行う. I C拡張型心筋症の診断が確定している患者に対し,以下のいずれかの目的でTTE を行う. 1)症状に変化があった場合の心機能,左室壁運動,弁膜症,右室機能,肺高血圧の評価を行う. 2)他の検査結果により治療内容を変更する可能性がある場合に再評価を行う. 3)高度左室収縮機能低下,心房細動,血栓塞栓症合併例での心腔内血栓の評価を行う.必要に応じてTEE を併用する. I C拡張型心筋症と二次性心筋症の鑑別のためにTTE を行う. I C拡張型心筋症または類似の病態と診断が確定している場合で,とくに変化がない場合のフォローアップとしてのTTE を考慮する. IIa C [心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)からの変更点]全項目:「心エコー検査」を「TTE」に変更,Minds推奨グレードおよびMindsエビデンス分類は削除,第2項目:「2) 検査結果により」を「2) 他の検査結果により」に変更,「*必要に応じて経食道心エコー法を併用する」を「*を削除し,3)の文末に移動」,第3項目:「拡張型心筋症の鑑別のために」を「拡張型心筋症と二次性心筋症の鑑別のために」に変更.TEE:経食道心エコー法(日本循環器学会/日本心不全学会.2018 349)より改変)