p.62 抽出テキスト
低下していると考えられ,低心拍数の場合は低心拍出量となりうる.また,LVEFは保たれていても,GLS値が低下している症例が認められ,これらの症例では予後不良という報告がある.LVEFが保たれていても左室収縮機能は必ずしも正常と考えるべきではない358).一部の症例では,経過中に,肥大した心室壁厚が減少,さらに菲薄化し,正常収縮ないし過収縮している壁運動が低下,左室内径は増大傾向から左室拡大に至り,収縮不全からついにはうっ血性心不全を呈し,拡張型心筋症と類似の病態を示して拡張相肥大型心筋症と分類される359).拡張相肥大型心筋症は予後不良であり,わが国の心臓移植症例の約10%を占めている.長期にわたる定期的な心エコー法による評価が望まれる. 2.2.2 左室拡張機能 肥大型心筋症では左室拡張機能が障害されている.肥大型心筋症における典型的な左室流入血流速波形異常は拡張早期波(E波)の低下,その減速時間(DcT)の延長および心房収縮期波(A波)の増高であるが,拡張相に至れば左房圧上昇により,いわゆる偽正常化波形(pseudo normalized pattern)や拘束型波形(restrictive pattern)を呈する360).しかし通常,肥大型心筋症ではLVEFが保たれており,左房圧は左室流入血流速波形から予測困難とされ228),E波の最大血流速度と組織ドプラ法による拡張早期僧帽弁輪移動速度e’との比E/ e’,TRV,左房容積拡大の有無等を用いてASE/ European Association of Cardiovascular Imaging (EACVI)のガイドラインに沿って左房圧を推定する193) (第3章 3. 左室拡張機能の評価を参照). 表43 肥大型心筋症における経胸壁心エコー法(TTE)の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 肥大型心筋症が疑われる患者における形態評価,心機能・血行動態・合併症の評価のため,TTE を行う. 1)肥大の分布・程度の評価のため,TTE を行う. 2)収縮機能・拡張機能の評価のため,TTE を行う. 3)左室流出路閉塞の有無,存在する場合はその程度の評価のため,TTE を行う. 4)MR 合併の有無,存在する場合はその程度の評価のため,TTE を行う. I B肥大型心筋症の診断確定患者で,心機能,左室流出路障害の有無・存在する場合はその程度,MR の程度評価のために,TTE を行う. I C肥大型心筋症の診断確定患者で, 1)症状に変化があった場合,1 項目の1)~4)の評価のため,TTE による再評価を行う. 2)臨床的に感染性心内膜炎が疑われる場合に,疣贅の有無の評価のため,TTE を行う.必要に応じてTEE を併用するI C肥大型心筋症の診断確定患者で,安静時左室流出路血流速度による推定圧較差50 mmHg 未満の患者においてバルサルバ手技,または立位テストを行う. I C肥大型心筋症の診断確定患者で,症状があり,安静時左室流出路血流速度による推定圧較差 50 mmHg 未満の患者において運動負荷心エコー法を考慮する. IIa B 肥大型心筋症の診断確定患者で,とくに変化がない患者にも,TTE によるフォローアップを考慮する. IIa C肥大型心筋症の診断確定患者で症状がなく,バルサルバ手技,または立位テストにおいても左室流出路血流速度による推定圧較差50 mmHg 未満の患者において,運動負荷心エコー法を考慮してもよい. IIb C 家族歴のある例におけるスクリーニング検査として,TTE を考慮してもよい. IIb C [心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)からの変更点]第1項目:「形態診断評価,とくに拡張期壁厚評価」を「形態評価,心機能・血行動態・合併症の評価」に変更,「1)肥大型心筋症の診断,心機能・血行動態・合併症の評価」を削除,「ある場合はその程度評価」を「存在する場合はその程度の評価」に変更,第2項目:「確定診断患者で心機能,血行動態による心不全重症度の評価」を「診断確定患者で,心機能,左室流出路障害の有無・存在する場合はその程度,MRの程度評価」に変更,第3項目:「上記評価点のため」を「1項目の1)~4)の評価のため」に変更,「*必要に応じて経食道心エコー法を併用する」を「*を削除し,2)の文末に移動」,第3~7項目:「肥大型心筋症の診断確定患者で」に変更,第4, 5および7項目:「左室流出路速度による」を「左室流出路血流速度による」に変更,第5項目:「運動負荷テスト」を「運動負荷心エコー法」に変更,第6項目:「場合」を「患者」に変更,第7項目:「運動負荷テスト」を「運動負荷心エコー法」に変更,第8項目:「スクリーニング」を「スクリーニング検査」に変更,全項目:Minds推奨グレードは削除.TEE:経食道心エコー法. (日本循環器学会/日本心不全学会.2018 349)より改変)