p.61 抽出テキスト
1 概要 一般的に非閉塞性肥大型心筋症患者は無症候であることも多く,本症に特徴的な症状はないと言ってよい.一方,左室流出路狭窄を有する患者は有症状・有症候の場合が多く,症状は治療方針とも関連する.心電図では,1冠動脈疾患では説明のつかない異常Q波,2ST-T変化,3陰性T波,4左室側高電位,などが肥大型心筋症に比較的多くみられる.症状・症候から本症が疑われる場合に心エコー法の適応がある.巨大陰性T波が認められる場合は心尖部肥大型心筋症の可能性を考える349). 1.1 診断 肥大型心筋症は,臨床的には心エコー法もしくは心臓MRIで15 mm以上の最大左室壁厚(肥大型心筋症の家族歴がある場合は13 mm以上)を有することで診断される349-351).2014年のESCのガイドライン352)では,肥大型心筋症に関するより具体的な診断基準が提唱されている.以下に重要な点を列挙する. 11つ以上の左室セグメントにおいて,15 mm以上の左 室壁肥厚が認められる.これは心エコー法,心臓MRIなどの画像診断を用いての安静時での評価による. 213~14 mmの壁肥厚の場合,肥大型心筋症の診断は 家族歴,心臓以外の症状や所見,心電図所見,遺伝子検査所見,各種画像検査所見を含めた総合的な判断となる. 3左室壁肥厚が15 mm以上の肥大型心筋症患者の第1 度近親者については,心エコー法,心臓MRI,心臓CTなどの画像診断で1つ以上の左室セグメントにおいて13 mm以上の左室壁肥厚を認めた場合,肥大型心筋症の可能性を考慮する. 2 経胸壁心エコー法の適応と判読 (表43) 349) 2.1 心形態評価 肥大型心筋症の特徴的な肥大様式は,左室壁のいずれかの場所で15 mm以上(家族歴のある患者では13 mm以上)の,圧負荷などで説明のつかない非均等型の左室壁肥厚である352).肥大の部位は心室中隔のみならず,左室後壁や前壁,側壁,さらに右室に局在することがある.わが国では,海外に比して心尖部肥大型心筋症が多い353). Maronの分類は,前部中隔に限局する肥厚(I型),中隔全体の肥厚(II型),中隔から左室前壁や側壁を含む肥厚(III型),前部中隔以外の部位の肥厚(IV型)に分類され,心尖部肥大型心筋症の少ない欧米ではよく用いられる354).傍胸骨短軸像を基本として,傍胸骨長軸像,さらに心尖部二腔,四腔断面像を網羅する複数断面で観察することにより局所心筋肥大を見逃さないようにする.心基部,中部,心尖部の短軸断面で拡張末期の壁厚を必ず計測する.心尖部型では心エコー法では明瞭な心尖部画像が描出困難な場合があり,造影CTや心臓MRIなど他の画像診断法から総合的に診断する.ただし,非均等型の左室壁肥厚は本症以外にも高度の右室負荷心,高血圧性心肥大,ASなどでもみられること,また,本症でも対称性壁肥厚がまれではないことも銘記すべきである355).心ファブリー病は,心筋細胞へのスフィンゴ糖脂質蓄積により全周性の左室肥大を示すが,鑑別を要する疾患の一つである356, 357). 2.2 心機能・血行動態・合併症評価 2.2.1 左室収縮機能 肥大型心筋症では通常,LVEFは正常か軽度増加を示す.しかし,特に内腔が狭小化している症例では1回拍出量は 第9章 肥大型心筋症