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第8章 心筋炎 1 適応 心筋炎は心筋を主座とした炎症性疾患であり,発症様式により急性心筋炎と慢性心筋炎に分けられる.急性心筋炎のうち,発病初期に循環動態破綻をきたし,機械的補助を要するものを劇症型心筋炎と呼ぶ338).急性心筋炎の診断には,急性心筋梗塞の否定および心内膜心筋生検による心筋への炎症細胞浸潤等の病理学的証明が必要である.経胸壁心エコー法は,他の心疾患の除外診断の視点からも,急性心筋炎を疑う症例では必須の検査法である339).ただし,発症早期に劇症化を含めた予後予測を行うのは難しく340),左室壁運動の変化を経時的に評価する必要がある339).本症はたとえ軽症例であっても,注意深い経過観察を要し,経胸壁心エコー法もその一翼を担う338).なお,画像診断法として心臓MRI, 67Ga心筋シンチグラフィもその診断に有用である338).慢性心筋炎は数ヵ月以上持続する心筋炎338)であり,経胸壁心エコー図上,拡張型心筋症に類似した所見をとり,経胸壁心エコー法だけでは鑑別困難である.心筋炎における経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表42に示す. 2 判読 典型的な急性・劇症型心筋炎の経胸壁心エコー法所見は,心膜液貯留341),炎症に伴う左室の全周性求心性壁肥厚とびまん性壁運動低下を示し,左室拡大は認めないか最小限である342).また,左室拡張機能障害343)や心内血栓342)を合併することがある.劇症化に至った症例では,右室機能も著しく障害されることが多く344),その後の治療経過に影響を与える.劇症化に至らない急性心筋炎では,炎症の部位に一致した局所壁運動異常にとどまる症例もあり345),虚血性心疾患との鑑別を要する.劇症化診断には,左室壁厚増加346)および左室壁運動低下の進行,心拍出量の低下という経時的変化が重要となる.ときに,その変化は急速であり347),機械的循環補助導入のタイミングを逸しないように注意する.なお,機械的循環補助(Impella ®,経皮的心肺補助[PCPS],大動脈内バルーンポンプ[IABP])導入時には病態の経時評価だけでなく,Impella ®留置にも経胸壁心エコー法が重要な役割を果たす348).なお,左室,右室の壁運動改善は病態改善を示す347).急性期からの回復後3~6ヵ月において,運動耐容能の評価,ホルター心電図・経胸壁心エコー法での回復確認が必要である347). 慢性心筋炎の場合には,びまん性壁運動低下に加え,左室径も拡大していることが多く347),拡張型心筋症様の心エコー像を呈する. 表42 心筋炎における経胸壁心エコー法(TTE)の推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 急性心筋炎診断のためにTTE の施行を考慮する. IIa C急性心筋炎における経時的TTE 所見変化による劇症化,病態改善の診断を考慮する. IIa C初回TTE による急性心筋炎劇症化の予測は推奨されない. III No benefi t C慢性心筋炎診断のためのTTE は推奨されない. III No benefi t C