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p.57 抽出テキスト

との比較のためのベースラインの経胸壁心エコー法を記録しておくことを推奨する.その際に何らかの人工弁機能不全や左心機能低下が認められる例では,必要に応じて以後適宜心エコー法を行う.術後の経過中,臨床症状や身体所見から人工弁機能不全が生じたと疑われる場合には,ただちに心エコー法を施行することを推奨する.術後に人工弁機能不全を認めず無症状に経過している例においては,弁の種類や術後年数によってフォローアップの心エコー法のタイミングや頻度は異なる.

2.1 生体弁(外科的置換術)

生体弁では経年的に構造的弁劣化(structural valvular deterioration)と呼ばれる弁尖の線維化や石灰化などの劣化が起こり,弁狭窄や弁逆流が起こる.生体弁の劣化による狭窄や逆流は緩徐に進行することが多いため,経時的に経過をみて再手術時期を検討する.外科的置換術を行った生体弁の耐用年数は患者の年齢や併存疾患,弁位,人工弁の種類などによっても異なるが,構造的弁劣化は術後5年以降に少しずつ増加し,再手術が必要となるのは10~ 15年経過したものが多い333).また,人工弁縫合輪周囲の結合組織が増殖して(パンヌス[pannus])人工弁開放制限を生じることがある.術後は外来での定期的な経過観察が必要になるが,術直後に人工弁機能や左心機能に問題がなければ術後5年以内は必ずしも心エコー法を毎年行う必要はない.ただし,臨床症状や聴診所見から人工弁機能不全が疑われれば速やかに心エコー法を行う.本ガイドラインではASEガイドライン74) の推奨に準拠し,術後5年を経過した症例では構造的弁劣化の頻度が増加するため,年1回の定期的な心エコー法を推奨する.また,生体弁では弁葉(cusp)に裂け目(cusp tear)が生じて逸脱し,急速な逆流の増悪を生じることがある.このcusp tearが急速に進行する場合は,早急に手術が必要となる.cusp tearが疑われる症例では迅速に経胸壁・経食道心エコー法を行い,再手術の時期を検討する.

2.2 生体弁(経カテーテル留置術)

近年増加している経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI/TAVR)の心エコー法によるフォローアップは外科的弁置換術後と状況が異なるため,ASEガイドラインでも別に扱われており308),本ガイドラインでも分けて記載する. TAVI後に見られる弁周囲逆流は,中等度以上になると予後と関連することが知られており334),術直後に弁周囲逆流が軽度でも見られる場合には,重症度に応じて定期的な心エコー法が必要である.また,TAVI後の人工弁には最大

約1%の血栓症のリスクがあることが報告され,その好発時期は1年以内とされている335, 336).また,さらにTAVI後の人工弁は術後数ヵ月以内に血栓形成と関連した弁開放異常が生じる可能性も指摘されている337).そのため,TAVI後の生体弁に関しては,術直後に加えて少なくとも術後6ヵ月以内に1回,その後も年1回の定期的心エコー法の実施を推奨する.

2.3 機械弁

術直後に人工弁周囲逆流が認められる例においては,その後定期的な心エコー法が必要である.術直後に弁周囲逆流などの人工弁機能不全やPPMを認めない例では,必ずしもルーチンで心エコー法を行う必要はないが,人工弁機能不全が疑われる例では速やかに心エコー法を行う.人工弁開放制限の原因としては,血栓弁やパンヌス形成,人工弁感染が主な理由であり,人工弁前後での圧較差上昇を認める場合は,人工弁周囲にこのような異常構造物を認めないか注意深く観察する.一方,機械弁では人工弁のorifice (弁口)によって流速に差が生じることがある.たとえば,連続波ドプラ法で二葉弁の間の流速を記録した場合には実際の圧較差よりも血流速度が速くなり,簡易ベルヌーイの式では圧較差を過大評価することが知られている74).このため,人工弁通過血流速度とそれに基づく圧較差推定については,術直後のドプラ計測値との経時的比較を参考に病的意義について考える必要がある.血栓弁や感染を原因とする人工弁開放制限による症状は比較的急激に発症することが多く,弁透視でも開放角に異常が見られることが多い.一方,パンヌスによる人工弁開放制限は,比較的緩徐な進行で弁透視でも開放角に大きな異常が見られないこともある.機械弁ではアーチファクトのため経胸壁心エコー法による人工弁周囲の評価を十分行うことができず,人工弁機能不全を疑った場合には後述する経食道心エコー法を推奨する.心エコー法では機械弁の可動性について評価が不十分であることが多く,機械弁の機能不全を疑う場合には躊躇せず弁透視を施行することも重要である.人工弁置換術例における経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表38に示す.

3 経食道心エコー法の適応(表39)

経食道心エコー法は,人工弁置換術中のモニタリングと