p.56 抽出テキスト
表37 TR に対する各検査の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル TR の重症度,病態,右室および右房,推定肺動脈収縮期圧,推定右房圧,併存する左心系疾患の評価にTTE を行う. I C臨床所見と非侵襲的評価の結果に乖離がある場合の肺動脈圧や肺血管抵抗,右房圧の評価のための侵襲的カテーテル検査を考慮する. IIa C TTE で十分な評価ができない場合にTEE を考慮してもよい. IIb C右室容積や収縮機能を評価するための心臓MRI あるいは3D 心エコー図検査を考慮してもよい. IIb C重症TR にもかかわらず,症状が不明瞭な場合に運動負荷心エコー図検査または心肺運動負荷試験を考慮してもよい. IIb C TTE:経胸壁心エコー法,TEE:経食道心エコー法(日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会.2020 122)より) 1 概要 人工弁置換術の発展は,弁膜症患者の予後を大きく改善した.一方で,一度人工弁置換術を受けた患者は,生涯にわたってさまざまな人工弁機能不全のリスクを伴うことになる.心エコー法は非侵襲的で繰り返し行うことが可能であり,人工弁機能不全の評価に有用である.臨床症状や身体所見から人工弁機能不全を疑った場合には,ただちに心エコー法を施行すべきである.人工弁機能不全は,人工弁縫着不全による弁周囲逆流など術中手技に関連して術直後から認められるもののほか,時期によらない血栓弁や人工弁感染,術後遠隔期に生じるパンヌスによる弁開放制限や生体弁の構造的劣化などさまざまなものがある.また,生体弁と機械弁では人工弁機能不全の病態が異なる部分もある.さらに患者の体格に比べて人工弁サイズが小さい場合は人工弁患者不適合(PPM)という病態が生じ,術直後より人工弁圧較差は高値となり,心イベントの発生と関 第7章 人工弁 連する331, 332).このため,心エコー法を担当する者は,人工弁の種類とサイズ,手術時期を認識し,起こりうる合併症を想定した上で検査にあたる必要がある.また,人工弁置換術後の左室サイズや収縮機能の経時的な評価も心エコー法の重要な役割である.一方で,無症状の人工弁置換術後に対する心エコー法の施行時期,頻度に関しては,明確な基準となる臨床的エビデンスが乏しい.ここでは,限られたエビデンスと専門家の合意に基づき,人工弁置換術後の心エコー法の適応と判読について述べる. 2 経胸壁心エコー法の適応 人工弁狭窄や逆流を認めた場合,再手術の適応を検討する上で経年的な狭窄や逆流の変化の評価が重要である.また,患者の長期予後を予測する上でも術後心機能の変化は重要であり,術後に心機能低下が残存する例ではレニンアンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬など内科治療が必要になる例がある.このため,術後早期(退院前)に,以後