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p.55 抽出テキスト

に伴った弁輪拡大などが代表的なものとして挙げられ,二次性の頻度のほうが圧倒的に多い.経食道心エコー法も三尖弁の形態評価には有用であり,経胸壁心エコー法での評価が不十分な場合に考慮されるが,同じ房室弁である僧帽弁と比較すると描出角度が斜めになることも多く,3D経食道心エコー法での評価は難しいことが多い.しかし,今後三尖弁疾患に対するカテーテル治療などが登場してくると予想され,三尖弁に対する経食道心エコー法の重要性が増すと考えられる.

2.3 心機能/心負荷評価

TRは,右室容量負荷をきたす疾患であり,右室機能の評価は重要である.右室は左室を三日月状に取り囲む形態をしていることから,一断面で全体を描出して収縮機能や拡張機能を評価することが難しい.またTRの手術適応を考慮するにあたっては,右室機能障害が高度でないことが挙げられているが,どこからが高度でどこまでが高度でないかを明確にした報告は存在しない.右室収縮機能の代表的な心エコー法の指標として,Mモード法を用いたTAPSEや,組織ドプラ法を用いた三尖弁輪の収縮期最大移動速度s’,FACなどが従来用いられてきたが,最近ではスペックルトラッキング法を用いた右室自由壁の長軸方向収縮期ストレインや,3D心エコー法を用いて算出した右室駆出率も用いられる(「第3章 5. 右心系の機能評価」を参照).一方,TRでは右室後負荷は低下しており,逆流が多い状態での「正確な」右室機能の評価は難しい.

右室前負荷(右房圧)の推定には,下大静脈径およびその呼吸性変動を評価する.また右心系は左心系と比較して負荷による変形をきたしやすいため,容量負荷が顕著なTRでは拡張期に心室中隔の扁平化がみられることが多い.

さらに,TRシグナルから肺高血圧の合併を推定することも重要である.肺高血圧は,TRの原因となる.TRの最大血流速度(V)より,簡易ベルヌーイ式(圧較差=4× V 2)を用いて右室–右房間の収縮期最大圧較差を計算することができ,そこに推定右房圧を加えることにより右室収縮期圧を推定することができる(肺動脈弁狭窄がなければ肺動脈収縮期圧と一致).注意点として,重症TRで弁尖の接合が離開している例では簡易ベルヌーイ式が成り立たないため,この式による圧較差推定は利用できない.

2.4 負荷心エコー法 (第1章 3. 負荷心エコー法を参照)

エビデンスは乏しいが,重症TRにもかかわらず症状が明らかでない場合には,治療方針決定に運動負荷心エコー法が有効な場合がある.TRに対する各検査の推奨とエビデンスレベルを表37に示す73, 113, 122).

表36 心エコー図検査によるTR 重症度評価

軽症中等症重症

定性的カラードプラTRシグナル1+ 2+ 3+連続波ドプラ波形収縮早期ピーク(triangular shape)半定量的カラーシグナル面積(cm2) <5 5~10 >10カラーシグナル/右房面積比(%) ≧50縮流部幅(cm) <0.3 0.3~0.69 ≧0.7 PISA半径(cm) <0.6 0.6~0.9 >0.9肝静脈血流波形収縮期逆行波定量的EROA(cm2)(PISA法) <0.2 0.2~0.39 ≧0.4逆流量(mL) <30 30~44 ≧45 EROA:有効逆流弁口面積(日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会.2020 122)より)