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p.54 抽出テキスト

1 概要と適応

三尖弁疾患は,大きく 三尖弁閉鎖不全症/三尖弁逆流症(TR)と三尖弁狭窄症(TS)に分けられるが,いずれも右房圧の上昇をきたし,右心系のうっ血・右心不全をきたす病態である.日常の臨床において遭遇する三尖弁疾患の多くはTRである.TRは,表35に示すような原因により弁尖の接合が不良となり,心室収縮期に右室から右房に逆流血流を認める疾患である.三尖弁単独の異常を原因とするよりも,左心系の弁膜症に合併して認められる症例が多い.TSの頻度はそれほど高くはないが,三尖弁の可動制限により拡張期に右房-右室間に圧較差を認める疾患である73, 113, 122).

三尖弁疾患における心エコー法では,1逆流・狭窄の診断およびその重症度評価,2形態評価(原因の評価),3右心機能(右室収縮機能)の評価および右心負荷の評価,などである.TRが疑われる症例では,これらの評価のためにまず経胸壁心エコー法を行う73, 113, 122).

2 判読

2.1 重症度評価

TRの重症度評価は,同じ房室弁であるMRに比べると,定性的に評価される場合が多い.逆流の診断はカラードプラ法にて収縮期に右室から右房内へのジェットを描出することで行われるが,最重症例では弁尖が離開した状態となり右室と右房が等圧となっているため,逆流ジェットが描出されない場合もある.また,右房拡大が著明な場合には,逆流ジェットの面積だけで重症度を評価すると逆流量を過小評価することになる.重症TRの場合には,TRシグナルの連続波ドプラ波形におけるカットオフサインや肝静脈の

収縮期逆流波を認めることがあり重症度評価の補助となるが,必要に応じてPISA法などの定量指標を用いて総合的に判断することが重要である(表36) 73, 113, 122).またTRの多くは,左心系の弁膜症と同時手術の対象となる場合が多いため,同時手術の適応判断に必要な三尖弁輪径も必ず測定する.

TSでは,三尖弁の拡張期ドーム形成と開放制限を認め,三尖弁での拡張期平均圧較差が2 mmHg以上の場合にTSと診断する.重症度評価は三尖弁での拡張期平均圧較差を指標とし,5 mmHg以上の場合には治療介入を考慮する73, 113, 122).

2.2 形態評価

TRの原因(表35)は,三尖弁自体に器質的異常を認める一次性と,右室や右房拡大に伴って二次的に生じる二次性に分けられる.一次性の原因として,感染性心内膜炎,外傷性,エプスタイン病,医原性などがあげられる.二次性の原因としては心筋症,右室梗塞,肺高血圧,心房細動

第6章 三尖弁疾患

表35 TR の原因

疾患

一次性感染性心内膜炎

リウマチ性カルチノイド外傷マルファン症候群三尖弁逸脱エプスタイン病医原性(ペーシングリードとの干渉,右室生検に伴うもの)

二次性不整脈原性右室心筋症

その他の心筋症右室梗塞慢性閉塞性肺疾患,肺高血圧症左右シャント心房細動に伴う右房拡大および弁輪拡大