GL検索 v0.1.0
画像は 50 ページを描画したものです
page 50

p.50 抽出テキスト

法の重症度と症状が一致しない場合,すなわち重症MSにもかかわらず無症状の症例,または軽症から中等症MSにもかかわらず有症状の症例に運動負荷心エコー法の適応がある308, 309).安静時と運動負荷時の僧帽弁通過血流速度から平均僧帽弁口圧較差を計算して,運動負荷時の平均圧較差が15 mmHg以上であれば重症MSが示唆される.運動負荷時のTR圧較差を計測して,運動負荷時の推定肺動脈収縮期圧>60 mmHgであれば,重症MSが示唆される.

1.4 治療選択のための判読

MS以外の弁膜症は通常,重症でないと症状の発現を認めないが,MSの症状は心拍数に強く依存するため,従来の重症度分類で中等症に分類されてきた僧帽弁口面積(MVA)1.0~1.5 cm 2でも頻脈下では症状発現がみられる.これに基づいて2020年AHA/ACCガイドライン306) では,重症MSをMVA≦1.5 cm 2と定義し,無症候性重症MSをStage C,有症候性重症MSをStage Dとして治療介入の推奨度が決められている.症状に重点をおき介入を考慮した優れた勧告であるが,症状の客観的評価に課題が残る.本ガイドラインでは,従来の重症度分類を踏襲し,2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン122) に準じて,MVA< 1.0 cm 2 を重症MS,MVA 1.0~1.5 cm 2 を中等症MSとす

る(表30)

122).なお,平均圧較差や拡張期PHTは,弁血

流量,左房左室コンプライアンスや心拍数に大きく影響を受けるため,参考程度に用いることが妥当と思われる. MSは進行するため,心エコー法による定期的な経過観察が望まれる.軽症で3~5年ごと,中等症で1~2年ごと, MVA 1.0 cm 2未満では毎年の検査が推奨される.一般的には薬物治療を行っても労作時呼吸困難の臨床症状がありMVA≦1.5 cm 2の場合(中等症および重症MS)には,治療介入(外科手術またはPTMC)の適応と考えられる.僧帽弁置換術や直視下交連切開術の他にPTMCの適応となるが,治療法の選択・適応決定には心エコー法が必須である307).

弁の可動性,弁下組織変化,弁の肥厚,石灰化,交連部の癒合・石灰化,左房内血栓について観察する.リウマチ性でも交連部の癒合が著しく石灰沈着が高度にみられる例では,PTMCや直視下交連切開術の有効性が低いのみならず,ときには交連部の過剰な裂開や弁尖の裂開を生じてMRを惹起することがあるため,僧帽弁置換術の対象と考えたほうがよい.特に交連部高度癒合または石灰沈着が片側性に認められる例では,対側の比較的癒合の軽い交連部だけが過度に裂開し,場合によっては同部よりMRが発生する可能性もあるので注意を要する.また心房内血栓例,中等度以上のMRを有する例,弁下組織の変性が高度な例にもPTMCは不適応である.これらの検出には経食道心エコー法が適している.非リウマチ性はそもそもPTMCや直視下交連切開術の適応にならず,また弁輪部破裂の可能性が高いため僧帽弁置換術も難しい.また高齢のため併存症などにより心臓手術の高リスクであることが多い310).フレイルの評価も重要である.さらにASが僧帽弁輪部石灰化のリスク因子であるため大動脈弁の評価も行う311).

2 僧帽弁閉鎖不全症/僧帽弁逆流症 (MR)

2.1 適応

健診において,心雑音(吹鳴様汎収縮期雑音)や心電図,胸部X線写真などの異常を契機にMRがしばしば発見される.また,病態が進行すると心房細動などの不整脈や息切れなどの心不全症状を呈する.上記検査の異常や症状を認める場合には経胸壁心エコー法による精査を躊躇しては

表31 MS における心エコー法の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

MS が疑われる症例の,MS の重症度・病因,左室・左房サイズ/ 機能,肺高血圧および他の弁膜症の有無などを評価するためにTTE を行う. I B進行期MS におけるMS 進行の評価や,無症候有意狭窄期MS における手術時期を決定するために定期的にTTE を行う. I B心房内血栓の検索やPTMC を考慮している症例に対する僧帽弁・弁下部の評価のためにTEE を行う. I B安静時心エコー法の重症度と症状が一致しないMS 症例において,運動負荷心エコー法を考慮する. IIa B TTE が画像不良で評価が不十分なとき,僧帽弁・弁下部の評価のためにTEE を考慮する. IIa C治療や時間経過に伴う所見の変化が予想されない状況での再検査としてのTEEは推奨されない. III No benefi t C TTE:経胸壁心エコー法,TEE:経食道心エコー法