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p.48 抽出テキスト

己弁温存大動脈基部置換術などの術式が行われるようになり,より詳細な弁の形態評価が必要とされている.経食道心エコー法は,大動脈弁の形態評価や合併する大動脈異常の評価において有用である.特に経胸壁心エコー法では十分な情報が得られないときに経食道心エコー法を行う.一方で,経食道心エコー法は逆流ジェットを直交方向から評価することになることが多く逆流ジェット全貌の描出が難しいこともあり,重症度評価という視点からは経胸壁心エコー法のほうがより多くの情報が得られることが多い.

急性ARでは,重症ARとともに急速に上昇する左室拡張末期圧によって,カラードプラ法でみるARジェットの到達距離・持続時間は短くなる.僧帽弁早期閉鎖やそれに続く拡張期MRなどの所見が重症急性ARを示唆する.

2.4 心機能/心負荷評価

ARは左室に容量負荷をもたらす疾患であるため,慢性経過では左室拡大および遠心性肥大を生じる.心エコー法で左室拡大や左室機能を評価する.左室径の拡大やLVEFの低下は,たとえ無症状であってもARの手術適応に関わるため,左室拡張末期径・左室収縮末期径・LVEFを正確に評価することが重要である(特に経時的変化の評価が重要である).左室拡大の基準については,主要なガイドラインごとに異なる基準が提唱されており,かつガイドラインも順次アップデートされている現状がある.体格が小さい例においては,左室拡張末期径/体表面積という指標が用いられることもある301-303).日本循環器学会の「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」では,無症状ARにおいて,LVEF<50%,左室収縮末期径>45 mm,左室拡張末期径>65 mmまたは左室収縮末期径係数>25 mm/m

2 を手術適応としている

122).

2.5 負荷心エコー法 (第1章 3. 負荷心エコー法を参照)

ARに対する負荷心エコー法のエビデンスは少ないが,運動に対するLVEFや左室形態の変化は症例ごとに異なることが報告されており,運動時のLVEF増加の程度が低い症

例(Δ LVEF<4%)や運動時における左室収縮末期容積係数が大きい症例(≧40 mL/m 2)では,予後不良や大動脈弁置換術後の左室機能低下が予測される150, 151, 304, 305).

2.6 フォローアップ検査

手術適応を満たさない重症ARにおける左室機能や左室径のフォローアップ,中等症ARの進行に対して定期的な経胸壁心エコー法が必須である.ARに対する検査の推奨とエビデンスレベルを表29 122)に示す.

表29 AR に対する検査の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

AR が疑われる症例の逆流の重症度・病因,左室サイズ/ 機能などを評価し,治療介入の時期を決定するためにTTE を行う. I Bバルサルバ洞拡大,上行大動脈拡大,大動脈二尖弁などがみられる症例で,ARの有無や重症度を評価するためにTTEを行う. I B中等症または重症AR 症例で,AR の重症度や病因について十分な情報がTTEでは得られない場合にTEE を行う. I B大動脈二尖弁の症例について,弁尖形態, AS・AR の程度,大動脈基部形態/ サイズを評価し,今後の臨床経過の予測,治療介入の時期決定をするためにTTE を行う. I B中等症AR におけるAR 進行の評価や,無症状重症AR における手術時期を決定するために定期的にTTE を行う. I B [2020年改訂版 弁膜症治療のガイドラインからの変更点]「心臓MRI」,「心臓CT」,「心臓カテーテル検査」の項目を削除,第5項目「中等症ARにおけるAR進行の評価や,無症状重症ARにおける手術時期を決定するために定期的にTTEを行う」を追加TTE:経胸壁心エコー法,TEE:経食道心エコー法(日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会.2020 122)より改変)