p.45 抽出テキスト
なる大動脈弁および左室流出路の石灰化の分布,TAVI後の収縮期僧帽弁前方運動の原因となるapico-basal abnormal band,S字状中隔や僧帽弁下部異常の合併の評価も可能である.さらに術前のARやSVIはTAVI後の予後予測因子となるため,これらも評価が必要である293-295).また,術中の経胸壁心エコー法または経食道心エコー法によるモニタリングは,ワイヤー・カテーテル弁の位置決めや留置後の弁周囲逆流などの評価に有用であり,心タンポナーデなどの重篤な合併症の早期発見を可能とする292). 古典的低流量低圧較差ASにおける低用量ドブタミン負荷心エコー法の有用性に関しては前述のとおりであるが, TAVIは外科的大動脈弁置換術と比較して低侵襲な治療であり,ドブタミン負荷心エコー法による左室収縮予備能の有無にかかわらず生命予後改善と心機能回復が得られることが報告されている296).したがって,ドブタミン負荷心エコー法で左室収縮予備能がない場合でも,必ずしもTAVIを行わずに内科的保存治療となるわけではない297). 心臓造影CTは心エコー法よりも空間分解能に優れ, TAVI弁の種類,サイズや石灰化に伴う弁輪破裂などのリスク評価に有用であるため,TAVIの術前評価に必須な検査となっている290, 291).また,大動脈弁石灰化スコアは奇異性低流量低圧較差重症ASの診断に有用である212, 278, 298).心臓MRIにおいては,解剖学的評価と同時にT1マッピングやガドリニウム遅延造影を用いた心筋性状の評価が可能である299). 1.7 フォローアップ検査 ASは進行性の疾患であるため,中等症ASであっても,経時的な 経胸壁心エコー法によるフォローアップが必須である.当然,手術適応を満たさない重症ASに関しても,定期的な経胸壁心エコー法が必須である.ASに対する検査の推奨とエビデンスレベルを表26 122)に示す. 2 大動脈弁閉鎖不全症/大動脈弁逆 流症(AR) 2.1 概要 ARは,大動脈弁の弁尖間の接合が不良となり拡張期に大動脈より左室に逆流を認める病態である.その病因は表27のとおり多岐に渡るが73, 122),大きくは1弁自体の器質的異常による場合,2弁そのものには器質的異常がないものの弁周囲の異常(大動脈弁輪拡張症,大動脈解離など) により弁尖の接合が不良となって生じる場合,とに分けられる(図16) 122, 300).これらの分類は手術術式を想定して外 科医によって作られたものである.発症機序を理解し手術治療を考慮するうえで把握しておくべき分類である. 慢性のARでは,左室は容量負荷を受けるため,左室拡大および遠心性肥大を呈する.ARの評価において心エコー法に求められる役割は,1逆流の診断・重症度評価, 2逆流原因の評価(形態評価),3左室拡大・左室機能の評価,4合併する弁周囲構造・大動脈の異常の評価,などである.一方,急性ARの場合,慢性ARとは異なり,拡張末期容積の増加(左室拡大)や左室コンプライアンスの上昇を認めない段階で急激に逆流が生じるため,左室拡張末期圧は急速に上昇する.この結果,拡張期半ばで左室圧は左房圧を凌駕し,僧帽弁早期閉鎖やそれに続く拡張期MRを生じ,さらに著しい心拍出量低下を伴い,急激な重症肺水腫・心原性ショックを呈する.急性ARは慢性ARとは異なり,重篤で緊急手術を必要とする病態である. 表26 AS に対する検査の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル AS が疑われる症例の,AS の重症度· 病因,左室サイズ/ 機能などを評価するためにTTE を行う. I B中等症AS におけるAS 進行の評価や,無症候性重症AS における手術時期を決定するための定期的なTTE を行う. I Bカテーテル治療時(TAVI)においてTTEまたはTEE によるモニタリングを行う. I C LVEF の低下した低流量低圧較差重症AS に対する偽性重症AS と真の重症ASの鑑別や収縮予備能評価のための低用量ドブタミン負荷心エコー図検査を考慮する. IIa B無症候性重症AS または有症候性中等症AS における,負荷時の症状· 血行動態把握のための運動負荷心エコー図検査を考慮する. IIa C TTE が画像不良で評価が不十分な場合の大動脈弁· 大動脈基部の評価のためのTEE を考慮する. IIa C [2020年改訂版 弁膜症治療のガイドラインからの変更点]「心臓CT」,「運動負荷検査」,「心臓カテーテル検査による重症度・血行動態評価」の項目を削除,第3項目「カテーテル治療時(TAVI)においてTTEまたはTEEによるモニタリングを行う」を追加TEE:経食道心エコー法,TTE:経胸壁心エコー法(日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会. 2020 122) より改変)