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p.44 抽出テキスト

弁は先天性の大動脈弁疾患の中で最も多い疾患である.通常は2枚の弁尖の大きさは不均等であり,遺残交連を有する弁尖のほうが大きい.遺残交連の痕跡としてしばしばrapheを認める.2枚の弁尖が前後に開くタイプ(anteroposterior type)と左右に開くタイプ(right-left type)があり,前後に開くタイプのほうが多い.Rapheの数でtype 0, type 1,type 2 に分類するSievers分類もよく用いられる.二尖弁の症例では,長軸断層像で収縮期ドーミングを認める.僧帽弁にリウマチ性の変化があれば,大動脈弁の変化も概ねリウマチ性と考えてよい.しかしASでは,いずれの病態でも加齢とともに変性が進行し,著明な輝度増大と石灰化のためにしばしば原因の同定が困難になる.左室壁は対称性の肥厚を呈する.ときに大動脈近位部の拡大を認める.もし大動脈近位部の拡大を見たら,二尖弁を疑うことになる.二尖弁では狭窄・逆流にかかわらず,大動脈壁中膜の脆弱化のために,上行大動脈拡大のみならず,大動脈瘤,大動脈解離,大動脈縮窄を合併することがある281-285).また,大動脈弁のみならず弁下部の狭窄病変が合併していると連続波ドプラ法での大動脈弁通過血流速度上昇の原因となるため,左室の異常筋束(apico-basal abnormal band),S字状中隔,収縮期僧帽弁前方運動の合併に注意する.経胸壁心エコー法において,画像不良等で十分な情報が得られない場合には,経食道心エコー法による形態評価が有用である.

1.4 心機能

左室収縮機能の指標には,左室拡張末期径と収縮末期径から得られる内径短縮率,および拡張末期容積と収縮末期容積から得られるSVやLVEFがある.無症候性ASの手術適応を決定する上で,LVEF<50%が重要な判断基準となる.左室長軸機能であるGLSを用いてLVEFが保たれている時期の左室心筋の障害を検出し,予後を予測できる可能性がある194, 286, 287).しかし,GLSは診断装置の相違によって計測値が影響されることに注意を要する288, 289). 1.5 負荷心エコー法 (第1章 3. 負荷心エコー法を参照)

ASでは運動と低用量ドブタミンの2つの負荷法が用いられ,運動負荷では主に症状の確認や心血管イベントの予測を目的とし,ドブタミン負荷では主にLVEFの低下した古典的低流量低圧較差ASに対して重症度診断および術後予後予測を目的とする.なお,有症候性ASに対する運動負荷は禁忌である.

1.5.1 運動負荷心エコー法

大動脈弁口平均圧較差上昇(≧18 mmHg)や運動誘発性肺高血圧(運動時推定肺動脈収縮期圧≧60 mmHg)が心血管イベントの予測因子として報告されている126, 140, 142, 143).

1.5.2 ドブタミン負荷心エコー法

LVEFの低下した古典的低流量低圧較差ASにおける低用量ドブタミン負荷心エコー法では,ドブタミン20μ g/ mL/kgの最大負荷時に最大血流速度4 m/秒,平均圧較差40 mmHgを超えるものを真性重症ASとし,超えないものを偽性重症ASとする146).またドブタミン負荷により,SVが20%以上増加するか否かにより左室収縮予備能を評価する.左室収縮予備能の低下と外科的大動脈弁置換術後の予後不良との関連が報告されている147, 148).

1.6 カテーテル治療に必要な情報

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI/TAVR)のための狭窄弁形態評価は,造影心臓CTで行うのが標準であるが290, 291),3D経食道心エコー法でも弁の形態,カテーテル弁のサイズを決定するための大動脈弁輪やバルサルバ洞の形態評価,留置の際の冠動脈閉塞合併症を予想する左冠動脈主幹部の弁輪部からの高さなどの情報を得ることができ292),とりわけ腎機能低下により造影心臓CT検査ができない症例においては有用である.また,弁輪破裂の原因と

表25 奇異性低流量低圧較差重症AS における統合的評価

評価項目基準

臨床評価ASの典型的な症状イメージングによる心機能評価左室長軸機能の低下

イメージングによる定量評価3D心エコー,MRIによるSVI≦35 mL/m2

大動脈弁石灰化スコア高度である可能性が高い:男性≧2000,女性≧1200高度である可能性が低い:男性<1600,女性<800