p.42 抽出テキスト
右室疾患が疑われる症例において,早期もしくは軽度右室機能障害の指標として,また右室障害を有する症例の予後予測因子として,右室拡張機能を評価することが推奨される. 5.3 中心静脈圧の推定 中心静脈圧(右房圧)は,下大静脈の径と鼻すすり(sniff)による径の変化により評価する.心窩部からのアプローチにより,肝臓下を走行する下大静脈長軸断面を描出し,呼気末期時に下大静脈の最大径を計測する.測定は,右房入口部から0.5~3.0 cmに位置する肝静脈合流部のすぐ近傍で行う206).その際,姿勢により下大静脈形態が変化するため,左側臥位での検査を推奨する265).また,sniffにより下大静脈の位置がずれ,正確な下大静脈径を計測できない可能性がある.このため,sniffによる下大静脈の位置の変化について短軸断面で確認することが望ましい. 右房圧を推定するアルゴリズムを図15 206)に示す.右房圧は,最大下大静脈径およびsniff時の虚脱率によって,0 ~5,5~10,そして10~20 mmHgの3段階に層別化する.各段階の範囲ではなく,各中央値3,8および15 mmHgを代表値として用いる.最大下大静脈径が2.1 cm以下で,かつsniffにより50%以上の虚脱を認めると3 mmHg(範 囲0~5 mmHg),最大下大静脈径が2.1 cmより大で,かつsniffによる虚脱率が50%未満の場合には15 mmHg(範囲10~20 mmHg)に分類される206).これらの所見に一致しない場合,8 mmHg(範囲5~10 mmHg)に分類されるが,可能であれば,他の右房圧上昇を示唆する指標と総合的に判断するべきである.その指標とは前述した右室拡張機能指標に相当し,これらの右房圧上昇を示唆する指標がすべて当てはまらない場合,右房圧を3 mmHgへ段階を下げてもよい.一方,これらの指標の異常を認め,かつsniffによる虚脱率が35%未満の場合,右房圧を15 mmHgへ段階を上げてもよい.以上の検査による評価が困難な場合,または右室拡張機能検査を追加しても不明確な場合は8 mmHgに据え置く.sniffが困難な場合,通常の呼吸下で,虚脱率が20%未満の場合に,右房圧上昇が示唆される.また,下大静脈の短軸断面像も右房圧の推定に有用であり,断面の円形化は右房圧の上昇を支持する所見として参考になる266, 267).一方,人工呼吸器が装着された状態では,下大静脈の虚脱率は右房圧を正確に反映しないので注意が必要である268).また,若年の運動愛好者は,下大静脈径が大きく,上昇した右房圧の推定が困難な場合がある. 表23 右室拡張機能の分類 弛緩異常偽正常化拘束性障害 右室E/A <0.8 0.8~2.0 >2.0 付帯条件-右心系E/e’>6 またはTVIs/(TVIs+TVId)<0.55三尖弁E波のDcT<120 ミリ秒 TVI:肝静脈ドプラ血流の時間速度積分値,TVIs:肝静脈ドプラ血流S波のTVI,TVId:肝静脈ドプラ血流D波のTVI 条件1呼気末期最大下大静脈径≦2.1 cmかつsniffによる虚脱率≧50%または安静呼吸で虚脱率>20%条件1,2に合致しない 3 mmHg(範囲0~5 mmHg) 8 mmHg(範囲5~10 mmHg) 15 mmHg(範囲10~20 mmHg) 条件2呼気末期最大下大静脈径>2.1 cmかつsniffによる虚脱率<50%または安静呼吸で虚脱率<20% 1.右室E/A>2.0,DcT<120 ミリ秒2.三尖弁E/e’>6 3.TVIs/(TVIs+TVId)<0.55 3指標すべてに合致しない データ利用不可データ利用不可sniffによる虚脱率 ≧35% <35% 図15 右房圧推定のアルゴリズムTVIs:肝静脈S波の時間速度積分値,TVId:肝静脈D波の時間速度積分値(Rudski LG, et al. 2010 206)より作図)