p.40 抽出テキスト
5 右心系の機能評価 5.1 概要 右心系の障害は,肺高血圧症だけでなく,心不全や弁膜症などの左心系心疾患の予後を規定することが明らかになり,その臨床的な重要性が広く認識されるようになった203-205, 256-258).ドプラ心エコー法は,右室機能や右心系血行動態評価において最初に選択される検査法であり,病態把握,治療方針の決定,および経過観察において重要な役割を担っている.右心系の機能および血行動態評価では,右室収縮機能および拡張機能,右室機能の後負荷依存性を 考慮して右室収縮期圧の推定,そして右房圧の推定を行う. 5.2 適応と判読 5.2.1 右室収縮機能 a. 指標 右室は複雑な形態を有し,超音波プローブの位置により容易に右室描出断面が変化するため,2D心エコー法による計測には注意が必要である(図14).再現性を向上させるには,右室に焦点を合わせた心尖部四腔像(RV focused four-chamber view)において計測することが重要である202).ポイントは,右室径の過小評価を避けるため右室径が最大になる像を描出すること,逆に右室径の過大評価を避けるため,左室の心尖部が描出され,かつ左室の中心を通る長軸像を描出することである.その際,左室流出路が描出される断面では,右室側壁が短縮されている可能性があるため注意が必要である. 右室の長軸方向の収縮機能を評価する方法として三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE),組織ドプラ法による三尖弁輪収縮期最大移動速度(S’),および右室自由壁の長軸方向収縮期ストレインがある.右室のグローバルな収縮機能を評価する方法には右室面積変化率(FAC)および3D心エコー法による右室駆出率,そして右室機能の総合的な指標としてTei index あるいはright ventricular index of myocardial performance(RIMP)がある.各指標の正常値ならびにそのカットオフ値を表21に示す.右室収縮期圧の推定方法については,「4. 肺高血圧症の評価」を参照されたい. 表20 肺高血圧症におけるスクリーニング心エコー検査お よびフォローアップの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 強皮症における初回スクリーニングとしてTTE を行う. I B自覚症状はあるが安静時に異常所見のない強皮症患者に対して運動負荷心エコー法を考慮する. IIa C肺高血圧症治療介入後の1 年ごとのフォローアップ心エコー法を考慮する. IIa C強皮症患者における1 年ごとのTTE は考慮してもよい. IIb C TTE:経胸壁心エコー法 図14 超音波ビーム方向による心尖部四腔断面像の比較3D画像より短軸および長軸像を再構成している.1が理想的な断面.短軸断面像における1と2は,左室心尖部を通過している(赤線)が,2は右室前壁側を捉えており,右室径を過小評価する.3の断面は右室径を過大評価し,左室心尖部が描出されていないため,右室の縦方向の距離が短縮される.