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p.39 抽出テキスト

4 肺高血圧症の評価

4.1 概要

肺高血圧症は安静時に右心カテーテル検査によって実測した平均肺動脈圧(mPAP)が25 mmHg 以上の場合に確定診断される疾患群である.病因により大きく5群(I群:肺動脈性肺高血圧(PAH),II群:左心系心疾患に伴う肺高血圧症,III群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症,IV群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症,V群:詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症)に分類される.最も多い病因は左心不全由来のII群であり,左室の収縮不全・拡張不全に起因する(mPAP≧25 mmHgかつ肺動脈平均楔入圧が>15 mmHgを満たす).mPAP≧ 25 mmHgかつ肺動脈平均楔入圧が≦15 mmHg,かつIII, IV,V群に該当しない場合にI群(PAH)と定義される. PAHおよび慢性血栓塞栓性肺高血圧症には特異的治療薬が存在するため,その鑑別は重要である254).

4.2 適応

肺高血圧症の臨床症状は軽い労作での息切れや呼吸困難が典型的であるが,失神や胸痛なども生じる.心電図所見(右軸偏位,V1~V4 のST-Tのストレイン型,V1のR波の増高,V5,V6の深いS波など),胸部X線写真(心拡大,特に左第2弓突出,両側胸水貯留など)で肺高血圧症が疑われる場合,経胸壁心エコー法の施行が必要である(表19).

4.3 判読

肺高血圧症の診断において,TRVから簡易ベルヌーイ式により収縮期右室–右房最大圧較差を算出し,右房圧を加えることで収縮期肺動脈圧を推定する方法が用いられる.前提条件として肺動脈弁狭窄がないことを確認する必要がある.この方法にはTRVを2乗することによる誤差の拡大,右房圧推定の不正確さなどの問題がある.このような問題の対策として,スクリーニング時にはTRVそのものを使用することが推奨されている254).TRVが3.4 m/秒より大であれば肺高血圧症が強く疑われる.TRVが2.9~3.4 m/秒の場合,他にも肺高血圧症を示唆する心エコー図所見を認めた場合に肺高血圧症を疑う.その所見として,右

室拡大(左室径との比が1より大),右室による心室中隔の圧迫,右房サイズの拡大(>18 cm 2),下大静脈の拡大(> 21 mmで呼吸性虚脱の減弱),心膜液の貯留,右室流出路収縮期加速時間の短縮(<105 ミリ秒),右室流出路血流の二峰性波形,拡張早期肺動脈弁逆流速度の増加(>2.2 m/秒),肺動脈径の拡大(>25 mm)等が挙げられる.

肺高血圧症の原因鑑別において基礎心疾患の評価は重要で,特に左心不全,シャント性心疾患の鑑別は必須である(表19).肝不全の存在など肺動静脈シャントが疑われる臨床背景の場合には,造影CTやMRIによる確定診断が必要である.左心不全に伴う肺高血圧症のなかでも, HFpEFが最近は増加していることに留意し,左室拡張機能の評価を心エコー法で行う254).

PAHの高リスク群として,膠原病の中でも免疫抑制療法の効果が得られにくい強皮症が挙げられる.よって強皮症患者では初回のスクリーニング経胸壁心エコー法が推奨される(表20).運動負荷による不顕性肺高血圧症の検出についてのエビデンスは十分ではないものの,自覚症状はあるが安静時に異常所見のない強皮症に対する運動負荷心エコー法を考慮する(表20)

153, 255).肺高血圧治療薬導入

や肺移植後など治療介入後の再評価右心カテーテル検査および1年ごとのフォローアップ心エコー法は治療効果判定および経過観察に考慮する(表20).強皮症患者をはじめとする高リスク症例における1年ごとのフォローアップ心エコー法は,医療機関へのアクセスや現病の病状にもよるが,考慮してもよい(表20).

表19 肺高血圧症を疑う場合の経胸壁心エコー法(TTE)

の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

肺高血圧症存在診断のための,TRV の計測および肺高血圧症を示唆するTTE所見* の取得を行う. I B症状,心電図,胸部X 線の所見から肺高血圧症が疑われる場合にTTE を行う. I C TTE により,左心不全鑑別のための左室拡張機能評価を行う. I C TTE により,リスク評価のための右房面積および心膜液貯留の有無の評価を行う. I Cシャント性心疾患鑑別のためのTEE を考慮する. IIa C *肺高血圧症を示唆するTTE所見:「4.3 判読」 を参照TEE:経食道心エコー法