GL検索 v0.1.0
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p.35 抽出テキスト

あるいは17セグメントに分割し,それぞれのセグメントにおける壁運動をスコア化して評価する3).17セグメントモデルでは心尖部の頂点(apical cap)を含むが,同部位の壁運動は評価困難なため,臨床では16セグメントモデルを使うことが推奨される.壁運動は,正常=1,低収縮=2,無収縮=3,収縮期壁菲薄化あるいは伸展=4とスコア化し,全領域で合計した後,領域数で除したスコアの平均値がWMSIである.すなわち,正常例のWMSIは1である.急性心筋梗塞発症後のWMSIが高値の症例は慢性期の予後が不良であると報告されている4).また,負荷心エコー法において,安静時と負荷時の局所壁運動をスコア化してその差を検討することにより,心筋虚血や心筋バイアビリティの診断に用いられる.

2.4左室長軸方向収縮機能指標(GLS,収縮期僧帽弁輪最大移動速度[sʼ],

収縮期僧帽弁輪移動距離[MAPSE])

左室長軸方向の収縮機能指標は,LVEFに比して早期に収縮機能低下を検出し,心疾患患者の予後予測に有用と報告されている213, 214).GLSはスペックルトラッキング法を用いて心尖部四腔断面像,二腔断面像および長軸像における収縮末期長軸方向グローバルストレインの平均値で算出される.健常成人のGLS(絶対値)は20%以上と報告されているが,次に述べるような理由により確定値とはならない3).GLS正常域に関して心エコー装置間やストレイン解析装置間でばらつきがあるため,現時点ではGLSの症例間の比較や同一症例の追跡には同一の心エコー装置とストレイン解析装置を用いることが推奨されている215).また,一つの心尖部画像において2つ以上のセグメントでトラッキング不良と判定された場合のGLSの使用は推奨されない.この場合には収縮期僧帽弁輪最大移動速度(s’)や収縮期僧帽弁輪移動距離(MAPSE)を用いて左室長軸方向の収縮機能を評価する.s’はパルス組織ドプラ法を用いて僧帽弁輪中隔側と側壁側で算出されるが,正常例では側壁側は中隔側に比し高値を示す.健常成人におけるs’の正常値は,中隔側s’は8.1±1.5 cm/秒,側壁側s’は10.2±2.4 cm/秒と報告されている216).MAPSEはM-mode法を用いて僧帽弁輪中隔側と左室側壁側で算出され,s’と同様に正常例では側壁側は中隔側に比し高値を示す213, 217).

HFpEFでは,心筋肥大や間質線維化により,局所心筋あたりの収縮機能は低下しているため,GLSは潜在的左室収縮機能障害の検出に有用と報告されている193).また, GLSのBull’s eye表示は心アミロイドーシスを示唆するストレインパターンであるapical sparing(心尖部のストレインが保持されている)の診断に有用である195).さらに,

GLSはLVEFに加えて心毒性薬物による心機能障害の診断に用いられる198).

2.5 左室圧増加率(dP/dt)

等容性収縮期のdP/dt(mmHg/秒)は,LVEFと同様に左室収縮機能の基本的な指標である.連続波ドプラ法を用いた僧帽弁逆流ジェット波形からdP/dtを算出することが可能であり,左室-左房間圧較差が4 mmHgから36 mmHgまで増大するまでの時間(t[秒])を計測し,(36 -4)/t (mmHg/秒)で求められる.この値は心臓カテーテル検査で得られたdP/dtと相関することが報告されている218, 219).ただし,MRが中等度から高度になると,時間(t)は等容性収縮期と必ずしも一致しないため,算出は不適当である.正常dP/dtは1200 mmHg/秒以上である.

3 左室拡張機能の評価

3.1 適応

左室収縮機能評価と同様に,左室拡張機能評価も経胸壁心エコー法による心機能評価の適応と判断されたすべての患者において行う(表17).とくに心不全の主要な症状である呼吸困難は左室拡張機能障害に起因するため,臨床症状から心不全が疑われる症例には左室拡張機能評価は必須である.また,左室拡張機能障害の重症度は慢性心不全の重症度と関連し,さらに治療による拡張機能の変化は予後と関連することから,心不全症例の重症度判定と治療効果判定においても左室拡張機能評価が必須となる.

3.2 判読

左室拡張機能は,拡張早期に生じる能動的弛緩・弾性反跳(elastic recoil)と心室充満にともなう受動的な弾性的特性(コンプライアンス)で規定され,これらの障害とともに,その結果として生じる左室充満圧の上昇も含めて左室拡張障害と定義される193).心エコー法による左室拡張機能評価には,パルスドプラ法を用いた左室流入血流速波形189, 220),肺静脈血流速波形221, 222),組織ドプラ法による僧帽弁輪最大移動速度191, 223, 224),断層法によるLAVI 225)などが用いられる.