p.34 抽出テキスト
LVEFである.ただし,LVEFは左室収縮機能を鋭敏に反映するものの,負荷依存性があり,左室収縮機能の優れた代用指標であるとの理解が適切であろう.一回拍出量(SV),心拍出量,壁運動スコア指数(WMSI),GLSなど,さまざまな指標を複合的に用いて左室収縮機能を判断する. 2.2 判読 2.2.1 LVEF 従来はLVEFの測定にMモード法が用いられてきたが,局所の二点間からの情報で左室全体の心機能を推定するため,局所壁運動異常や左室伝導障害を認める症例では測定誤差を生じ,正確性に劣ると考えられるようになった.現在最も推奨されるLVEFの測定方法は,2D断層心エコー法を用い,左室容積をベースとしたdisk summation法(modified Simpson法)である.その際には,心尖部四腔像と二腔像の二断面から左室容積を求めてLVEFを算出する3).この方法においては,左室が長軸方向に短縮した断面像が取得された場合に左室容積を過小評価する.一方 で,3D心エコー法による左室容積の測定精度が高いと報告されている6).ただし,3D心エコー法は2D心エコー法に比し空間分解能が劣るため,質の高い心エコー画像の取得を前提とする.臨床の場では視覚的にLVEFを評価することも多く,熟練した観察者での評価は信頼性が高いと報告されている207). 日本人の健常成人におけるLVEFの正常値は,男性64± 5%,女性66±5%と報告されている208).LVEF低下の重症度は,30~40%が中等度低下,30%未満が高度低下とされている3).ただし,心エコー法によるLVEFの定量評価は検者間で測定誤差があるため,測定値の解釈に注意が必要である209).LVEFの算出は,LVEFの低下(LVEF<40%)した心不全(HFrEF),LVEFが軽度低下(40~49%)した心不全(HFmrEF),LVEFの保たれた(≧50%)心不全(HFpEF)の診断に必須である.HFrEF患者においてLVEFは心不全の診断,治療効果判定や予後予測に有用であるだけでなく,心臓再同期療法(CRT)や植込み型除細動器治療の適応を決定するために必要な指標である210).また,高度の大動脈弁・僧帽弁弁膜症患者において,LVEFの測定は手術適応を判断する上で必須である211). 2.2.2 一回拍出量(SV)と(分時)心拍出量 心拍出量(L/分)はSV(mL)と心拍数(bpm)の積で算出される.SVや心拍出量は前負荷や後負荷に強く影響されるため,真の左室収縮機能を表す指標とはいえないが,全身臓器灌流を評価できる総合的な左室収縮機能指標といえる.体格の差を補正するためにSVと心拍出量をそれぞれ体表面積で除して,それぞれ一回拍出量係数(SVI),心拍出量係数として用いることがある.SVは,パルスドプラ法を用いて左室流出路血流速波形から時間速度積分値を算出し,これに左室流出路を正円形と仮定して左室流出路径から求めた左室流出路断面積を乗算して算出される.または,disk summation法を用いて左室拡張末期容積と左室収縮末期容積の差から求めることができる.SVと心拍出量は,低拍出性心不全と高拍出性心不全の鑑別や,心不全治療時の左室機能の経時変化の評価に有用な心エコー図指標である.また,AS患者において,SVIの測定は低流量低圧較差ASの診断やドブタミン負荷での左室収縮予備能の判定に用いられる212). 2.3 左室壁運動スコア指数(WMSI) 左室の局所的な壁運動異常を認める患者では,各セグメントにおける壁運動の評価が必要である.一般に左室を16 表16 経胸壁心エコー法(TTE)による左室収縮機能評価 の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル TTE による心機能評価の適応と判断された患者において,TTE により左室収縮機能の評価を行う. I A心不全が疑われる患者において,TTE によりLVEF の計測を行う. I A心不全が疑われる患者において,TTE によりSV,心拍出量の計測を行う. I A心臓弁膜症患者において,TTE によりLVEF の計測を行う. I A CRT や植込み型除細動器治療の適応決定のため,TTE によりLVEF の計測を行う. I A左室局所壁運動異常を認める患者において,TTE によりWMSI の評価を行う. I A心毒性薬物を使用する患者において、ベースライン時および治療中にTTE によるLVEF の計測を行う. I A心毒性薬物を使用する患者において、ベースライン時および治療中にTTE によるGLS の計測を考慮する. IIa B潜在性左室収縮機能障害検出のため, TTE によるGLS の計測を考慮する. IIa B