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p.33 抽出テキスト

第3章 心機能評価とその応用

1 心機能評価

心エコー法による心機能評価では, 左室駆出率(LVEF)や左室充満圧が主要な評価項目として臨床や研究において汎用されてきた.近年,エビデンスの蓄積および新たな技術の開発によって,推奨される評価項目数が前回のガイドラインと比較して増加している1).このような評価法の多様化により,心エコー法による心機能評価の応用範囲が広がりをみせている.一方,各方法には有用性と同時になお課題を有しているという事実を十分に理解すべきである.それによって心エコー法は信頼される心機能情報を提供することができる.

LVEFは病態診断,治療方針の決定,ならびに治療効果判定において最も一般的な左室収縮機能の指標である.さらに,心不全の病態の多様化に対してLVEFによる心不全の分類が提唱されており,その重要性は高まっている181).そのため,より精度が高く,再現性のよいLVEFの測定方法が求められている.人工知能をベースとした自動計測によるdisk summation法の精度向上,および3D心エコー法の応用が期待される6, 186, 187).

LVEFの保たれた心不全(HFpEF)の患者数の増加が顕著であるが,その主要な病態の一つである左室拡張機能障害は,従来から心エコー法の主要な評価対象である188-191).最も有用かつ普及している拡張機能指標は,E/AやE/e’に代表される左室充満圧の指標である.特にE/e’はさまざまな病態診断に使用されているが,それ単独での左室充満圧の推定には限界がある.現在ではTRV,LAVIなどとともに複数の指標によるアルゴリズムを基に左室拡張機能を分類するのが通常であるが192, 193),これについては欧米から提唱されたアルゴリズムを使用するのが一般的である.しかし,その内容も改訂が繰り返されている.アルゴリズムの適応とならない疾患や病態も少なくなく,そのアルゴリズムの特徴について精通する必要がある.

過去10年間で進歩した技術には,3D心エコー法とスペックルトラッキング法を用いた心筋ストレイン測定が挙げられ

る.従来の2D心エコー法に比べ,3D心エコー法によって左室容積測定の精度が向上している6, 187).また,LVEFでは層別化できない収縮機能の評価法として心筋ストレイン評価が広く行われるようになっている.特にGLSは臨床的価値の高い指標として注目され,弁膜症やアミロイドーシスなどLVEFが保持された病態での心筋障害の検出,冠動脈疾患における心筋虚血の検出,ならびに左室同期不全の評価などに広く臨床応用されるようになった194-197).また, HFpEFの診断や,抗がん剤治療関連心筋障害(CTRCD)の検出においても有用性が期待されている198, 199).心エコー装置間での測定値のばらつきが課題であるが,装置間でのアルゴリズムの差異を少なくする試みがなされてきた200, 201).心筋ストレイン法は,右室や心房機能にも広く応用されており,測定方法やデータの解釈について理解を深める必要がある202).

近年,肺高血圧症,先天性心疾患に加え,左心系疾患においても右室機能評価の重要性が認識されるようになった203-205).右室では左室のように右室駆出率を容易に求めることはできないため,右室機能は複数の心エコー図指標によって評価されている3, 206).右室機能の評価は,今後ルーチン検査においても必須項目となると考えられるが,解剖学的に複雑な右室を一次元や二次元(2D)画像により評価を行うには限界がある.このため,各指標の利点と欠点を理解したうえで,複数の指標を組み合わせ,総合的に右室機能を評価することが求められる.

2 左室収縮機能の評価

2.1 適応

経胸壁心エコー法による心機能評価の適応と判断されたすべての患者において,左室収縮機能の評価を行う(表16).左室収縮機能評価に用いられる中心的な指標は