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p.31 抽出テキスト

1.6 ショック

ショックの病態は,「血液分布不均衝性」,「循環血液量減少性」,「心原性」,「閉塞性」の4種類に分類される.ショックは救急外来受診患者の1~2%に認められる病態

であり,特に心原性ショックの死亡率は高く,可能な限り早期に適切な処置が求められる178).ショックへの適切な介入のためには,その原因となっている病因を把握することが重要であり,心エコー法はその一端を担う.ショックの病態の評価では,素早い病態の把握が求められるため,検査室で行う系統的心エコー法は推奨されない.一方,ベッドサイドで診療の一環として行う心エコー法はPoint-ofcare ultrasonography(POCUS)と称され,ショックの病態把握ならびに鑑別にスクリーニング検査として推奨される.POCUSとは,限られた時間の中での問題解決型アプローチを行い,病歴と身体所見から導き出された鑑別診断に基づき,観察部位・項目を絞る心エコー法である179, 180).

異常な症候として胸部X線写真,心電図,心臓由来バイオマーカーのいずれかに異常を認める場合,さらなる鑑別診断の絞り込みを行う目的で心エコー法が適応となる.症候の視点に立った,検査データ異常に関する経胸壁心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表15に示す.

2.1 心拡大 (胸部単純X線写真における心 陰影の異常)

心陰影の異常は,血管・心臓の形態異常,なかでも拡大を反映する.したがって,心陰影の異常を認める場合には症候の有無に関わらず,心エコー法を行うべきである.心エコー法によって心腔のサイズ,大血管近位部のサイズを計測し,各基準値に照らして異常の有無を判断する.また,左右心腔の大きさのバランス,心房心室の大きさのバランスから心疾患を疑うことができる.心腔サイズの異常を認めた場合には,その原因となる心機能の低下,前負荷・後負荷の異常や弁膜症・シャント性疾患の有無と程度を診断する.また,心腔のサイズに異常のあるほか,心膜液の貯留を認めるか,心タンポナーデの病態診断,さらに心膜液穿刺のガイドとして心エコー法が適応になる.心陰影の異常から心臓周囲腫瘤性病変を疑う場合のスクリーニングとして心エコー法が適応となる.腫瘤の有無,心臓への浸潤の有無,血行動態への影響の評価を心エコー法にて行う.

2 症候から

表14 症状からみたスクリーニング心エコー検査の推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

息切れ患者背景,身体所見,胸部X 線写真撮影,心電図検査を行い,息切れの原因として心疾患が疑われる場合にTTE を行う. I C息切れの原因を安静時TTE で診断できない場合,息切れが心疾患以外の原因によるものか,拡張不全に起因するものかの鑑別に負荷心エコー法を考慮する. IIa C胸痛

心電図異常を認める場合にTTE を行う. I C虚血性心疾患の既往がある場合にTTEを行う. I C心不全,弁膜症,肥大型心筋症,バルサルバ洞動脈瘤破裂,肺血栓塞栓症が疑われる場合にTTE を行う. I Cめまい・失神AS,肥大型心筋症,心不全などの疾患が疑われる場合にTTE を行う. I C失神前駆症状,浮遊感を訴える患者で,心電図,胸部X 線,身体所見などで心疾患が疑われる場合にTTE を行う. I C失神を呈する患者にTTE を考慮する. IIa C動悸患者背景,身体所見,胸部X 線写真撮影,心電図検査を行い,動悸の原因として心疾患が疑われる場合にTTE を考慮する. IIa C浮腫両側性の浮腫を呈し,病歴聴取や身体所見,血液検査・尿検査,胸部X 線写真,心電図で浮腫の原因が不明の場合にTTEを考慮する. IIa Cショックショックの病態把握と鑑別のためのPOCUS を行う. I C TTE:経胸壁心エコー法