p.30 抽出テキスト
患者の訴える症状から網羅的なスクリーニングとして,心エコー法は第一選択の検査にはならない.すべての症状に共通することであるが,身体所見,血液検査,心電図,胸部X線写真などでその症状が心臓由来であることが疑われるときに,心エコー法はスクリーニング検査として適応になる.症状からみたスクリーニング心エコー検査の推奨とエビデンスレベルを表14に示す. 1.1 息切れ 息切れ(特に労作時の息切れ)は,左房圧上昇による肺うっ血の症状として,初期に出現する症状であり,原因が心臓由来によるもので心不全が疑われる場合にはスクリーニングとして心エコー法の適応になる.したがって,息切れのほかに,頻呼吸や起座呼吸などの左心不全を疑わせる症状を認め,患者背景,身体所見,胸部X線写真,心電図などから息切れの原因として心不全が疑われる場合に,スクリーニングとしての心エコー法の適応となる.虚血性心疾患患者においては主訴が労作時息切れのみの場合があり,このような患者では,安静時心エコー法で明らかな異常を認めないことが少なからずある.虚血性心疾患を否定しえない場合は運動負荷や薬物負荷を用いて心筋虚血評価を行う必要がある.また,運動負荷心エコー法は,労作時息切れによって運動が制限されている患者において,その運動制限が心不全によるものかどうかを鑑別する際に有用である. 1.2 胸痛 胸痛は循環器疾患を有する患者の重要な症状であるため,スクリーニングとして心エコー法は有用である.しかし,胸痛を訴える患者において,心電図異常を認めず,さ 1 症状かららに虚血性心疾患の既往や心不全,弁膜症,肥大型心筋 症を疑う徴候のない患者に対しての心エコー法の施行は推奨されない175).また,このような患者の心エコー図には,特記すべき異常所見を認めることは極めて少なく,患者管理に影響を与えることもまれなので,不要な心エコー法は避けるべきであるとも報告されている176).よって,胸痛を訴える患者では,心電図異常を認める場合,身体所見などで心不全・弁膜症・肥大型心筋症が疑われる場合にスクリーニングとして心エコー法の施行が推奨される. 1.3 めまい,失神 失神,失神前駆症状,浮遊感といった症状が主症状として現れることの多いAS,肥大型心筋症,心不全などの疾患・病態が疑われる場合には,スクリーニングとして心エコー法が適応となる177).心疾患が疑われなくても明らかな失神を呈する患者に対してはスクリーニングとして心エコー法が推奨される177). 1.4 動悸 動悸は前述の息切れと同様に心不全の主症状の一つであるので,動悸の原因が心臓由来と考えられ心不全が疑われる場合には,スクリーニングとして心エコー法の適応になる. 1.5 浮腫 片側性の浮腫の場合で,心電図,胸部X線,身体所見などで心疾患が疑われない場合は,スクリーニングの心エコー法は推奨されない.両側性の浮腫については,病歴聴取や身体所見,血液検査・尿検査,胸部X線写真,心電図で浮腫の原因が不明の場合に,スクリーニングとして心エコー法の適応がある. 第2章 症状・症候とスクリーニング心エコー検査