p.28 抽出テキスト
し,冠血流量予備能の代用として用いられる.CFVR< 2.0では,冠動脈狭窄や心筋虚血の存在が診断される.ただし,左室肥大,重症弁膜症,心筋梗塞が存在する場合は,CFVR<2.0を心筋虚血判定のカットオフ値として用いることができるか否かは確立されていない.収縮期血流速の計測が困難な場合は,CFVRの代用として,拡張期平均流速の薬物負荷時と安静時の比が用いられる.薬物負荷の不適例(房室ブロック,喘息を有する例)での施行は避けるべきである. 4.2 左内胸動脈グラフト血流とその計測項目 前下行枝(LAD)への冠動脈バイパス術後のグラフト吻合部狭窄では,同部の血流速とその中枢側の流速比から吻合部狭窄を直接検出できる(図11).グラフトのLAD吻合部血流速が,吻合部手前のグラフト血流速の2倍以上であれば吻合部狭窄と診断される166).内胸動脈グラフト血流は,鎖骨上窩アプローチにて,鎖骨下動脈の短軸像を描出し,そこから前方に分岐する血管をカラードプラガイド下で検索することで描出される(図11).その血流速波形で,拡張期/収縮期血流速比の低下(<0.6)があれば,グラフト狭窄と診断される167).経胸壁冠動脈ドプラ法の推奨とエビデンスレベルを表12に示す. 5.1 心腔造影 日本において,現在コントラスト心エコー法が最も多く用いられるのは,攪拌生理食塩水を用いた右左シャント 5 コントラスト心エコー法(心腔)の診断である.攪拌生理食塩水は三方活栓を用いて10 mLのシリンジ内で生理食塩水9 mLと空気1 mLを攪拌することにより作成する方法が一般的である.生理食塩水中に空気の微小気泡(マイクロバブル)を生じさせ,経静脈的に投与する.正常例ではマイクロバブルによりまず右房が染影され,その後バブルは右室,肺動脈へ移動し,肺で吸収されたマイクロバブルは左心房には流入しない.しかし,シャント疾患が存在する場合には左心房にマイクロバブルが観察される.この手法は特にカラードプラ法のみでは診断が困難な卵円孔開存,右左シャントの診断に有用である.卵円孔を介した右左シャントの診断は原因不明の脳塞栓症の原因検索において重要である168).特に若年例においてはデバイス治療による卵円孔閉鎖術の適応も検討されることから,十分な検索を行う必要がある169, 170).経胸壁心エコー法,経食道心エコー法のいずれにおいてもマイクロバブル検出は可能であるが,検出率は経食道心エコー法のほうが高く,疑わしい症例では可能な限り経食道心エコー法により検索することが望ましい171).右左シャントは安静時には生じにくく,バルサルバ負荷やミュラー負荷時にのみ生じることも多いため,これらの負荷検査も同時に行う172).鎮静下経食道心エコー法において患者の覚醒が得られず,これらの負荷が難しい場合には,腹部の間欠的圧迫による下大静脈からの血液還流増加も効果的である173).左心系に現れるバブルの数によりシャント量の評価を行う170).判定は造影効果により左右されるため,必ず複数回行うことが重要である.通常は撹拌生理食塩水の投与を右正中静脈から行うが,左上大静脈遺残を診断する場合には左上肢から投与する必要がある.攪拌生理食塩水による評価は右心系に限られ,左心系の診断には超音波造影剤が必要である.米国においては超音波造影剤を用いた左室内血栓や左室形態の評価が広く行われている174).表13にコントラスト心エコー法の推奨とエビデンスレベルを示す。 図11 左内胸動脈グラフト分岐部血流シグナルの描出鎖骨上窩アプローチにて(左)鎖骨下動脈短軸像を描出して,分岐直後の左内胸動脈グラフト血流(中央)と血流速波形(右)が得られる.