p.24 抽出テキスト
慢性虚血性心疾患(慢性冠動脈疾患)に対する負荷心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表10 121)にまとめた.また,弁膜症に対する負荷心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表11 122) に示す。 3.2 判読 3.2.1 虚血性心疾患 壁運動は,米国心エコー図学会(ASE)による左室16分割モデルを用い,各分画を正常収縮(Normokinesis),低収縮(Hypokinesis),無収縮(Akinesis),奇異性収縮(Dyskinesis)の4段階で評価する3).この際,心内膜面の移動のみならず,壁厚の増大の変化にも注意を払う.安静時画像と比較して,壁運動低下の出現部位と範囲を判定することにより,心筋虚血の診断とその程度を推定することができる.安静時より壁運動異常を認める症例でのドブタミン負荷に対する反応は,1持続性改善型(improved type):低用量ドブタミン負荷で壁運動は改善し,高用量でも壁運動が改善するもの,2二相性変化型(biphasic type):低用量ドブタミン負荷で壁運動は一旦改善するが,高用量になると壁運動が再び悪化するもの,3増悪型(worsened type):低用量ドブタミン負荷から高用量ドブタミン負荷の間に進行性に壁運動が悪化するもの,4不変型(fixed type):ドブタミン負荷により壁運動異常の程度,範囲が変化しないもの,の4型に分類する123).持続性改善型は心筋虚血がなく,かつ心筋バイアビリティがあると判定する.二相性変化型,増悪型では,心筋虚血が存在し,か つ心筋バイアビリティがあると判定する.一方,不変型を呈する場合は,貫壁性心筋梗塞の存在を意味し,心筋バイアビリティはないと考える.慢性虚血性心疾患患者で二相性変化を呈した場合,当該領域に心筋バイアビリティのある「冬眠心筋」が存在すると考えられ,冠動脈血行再建術による心機能の改善が期待できる124). 3.2.2 弁膜症 共通する評価項目は,各弁膜症の重症度の変化と,運動誘発性肺高血圧出現の有無である.僧帽弁狭窄症(MS),僧帽弁閉鎖不全症/僧帽弁逆流症(MR),大動脈弁狭窄症(AS)では推定肺動脈収縮期圧60 mmHg以上が運動誘発性肺高血圧の定義とされており96),心血管イベントの強力な予測因子として知られている125, 126). a. MS 症状の確認のほか,圧較差および肺高血圧の有無の評価を行う.運動負荷時の僧帽弁口平均圧較差15 mmHg以上,推定肺動脈収縮期圧60 mmHg以上もしくは運動時に90%以上の推定肺動脈収縮期圧増加が心血管イベントの予測因子である127-130). b. MR i. 一次性MR 症状の確認のほか,逆流の重症度,運動誘発性肺高血圧の有無,左室および右室収縮予備能の評価を行う.逆流重症度は近位部等流速表面(PISA)法もしくはvolumetric法により評価し,運動時に逆流量15 mL以上の増加は心血 表9 負荷心エコー法の禁忌と中止基準 1 禁忌 ● 発症48時間以内のACS ● コントロール不良の心不全・呼吸不全● コントロール不良の高血圧● 症候性重症AS ● 重症閉塞性肥大型心筋症(圧較差>90 mmHg) ● 致死性不整脈を有する症例● 急性大動脈解離急性期,切迫破裂性大動脈瘤● 運動不可能症例● 同意が得られない症例● その他,主治医が不適と考える症例2 中止基準 ● 心拍数が目標心拍数([220-年齢]×0.85)に達した場合● 過度な血圧の上昇(収縮期血圧220 mmHg以上,拡張期血圧120 mmHg以上) ● 血圧の低下(運動中に10 mmHg以上の低下を生じる,または運動を続けても血圧が上昇しない場合) ● 持続性頻拍性不整脈出現● 無収縮様の壁運動低下の出現,あるいは冠動脈2枝以上の支配領域にわたる壁運動低下の出現● 心電図上,0.2 mV以上のST低下● 胸痛の出現および増悪● 下肢疲労● その他,続行不能の自覚症状の出現● 薬物に対する過敏症(薬物負荷時)