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前検査として必須である.経胸壁心エコー法で確定診断がなされなかったが弁膜症が疑われる,というような症例にも経食道心エコー法は有用である.弁置換術・弁形成術後には経胸壁心エコー法で弁周囲を十分に観察できないことが多い.弁膜症の周術期モニタリングに加えて,残存逆流や人工弁周囲逆流,弁機能不全が疑われる症例には経食道心エコー法を施行する.人工弁置換例では,機械弁・生体弁のいずれであっても弁機能評価に有用である.弁葉の可動性や変性,血栓やパンヌス,弁座動揺を検出できる74).人工弁機能不全が疑われた症例には経食道心エコー法が施行されるべきである.感染性心内膜炎が疑われる症例には,疣腫・弁輪部膿瘍・弁破壊の程度を観察するために経食道心エコー法を施行するべきである.特に人工弁や人工リング,ペースメーカリードなどの人工物の周囲は経食道心エコー法による観察が強く推奨される.先天性シャント性心疾患は経胸壁心エコー法のみで診断が可能な場合が多いが,心房中隔欠損孔の位置とサイズ,リム幅の測定には経食道心エコー法が用いられる.特に静脈洞型や冠静脈洞型(冠静脈洞天蓋欠損)の心房中隔欠損,肺静脈還流異 常の診断に有用である. 経食道心エコー法は大動脈瘤,大動脈解離,動脈硬化性プラークなど胸部大動脈病変の診断にも有用である.造影CTと異なり,腎機能障害や造影剤アレルギーをもつ症例にも安全に施行できる.血行動態変動による破裂などのリスクが高い急性大動脈疾患では,静脈麻酔下にバイタルサインを頻回に計測しながら施行するべきである.胸部大動脈解離ではエントリー,偽腔の血栓や血流の情報を得ることができる.遠位上行大動脈は経食道心エコー法で描出できない症例があることに留意する. 右室や左室心尖部は経胸壁心エコー法のほうが観察に適していることが多く,術中やカテーテル治療中など経胸壁アプローチが困難な状況を除いて経食道心エコー法は推奨されない.一般的に,治療や時間経過に伴う所見の変化が予想されない状況での再検査,および臨床所見から感染性心内膜炎の可能性が低いと判断される患者などは,経食道心エコー法の適応とはなりにくい.経食道心エコー法を行うべきではない疾患や病態としては,食道狭窄,食道静脈瘤(red color sign[RC] 1以上),食道憩室,胃・食道術後,食道癌,胃・食道の出血・潰瘍・腫瘍,頚部・縦隔放射線治療の既往が挙げられる.また,頚椎損傷など頚部の可動性に問題がある疾患も含まれる.滑脱型食道裂孔ヘルニアでは,プローブの位置に注意すれば安全に検査を施行できる.肝硬変では,上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤の有無を事前に確認するほうがよい.検査への理解・同意が得られない,または協力が得られない症例には施行すべきではない.これらの禁忌に関連する既往歴について,検査前に問診して危険回避に努める必要がある.検査施行前に,出血傾向,血小板や凝固機能の異常の有無を確認することも必要である.不安定狭心症や急性心筋梗塞の発症3日以内,血圧がコントロールされていない急性大動脈解離や腹部大動脈瘤,脳出血・脳梗塞急性期,破裂リスクの高い脳動脈瘤においては適応判断や検査施行に慎重さが求められる.局所麻酔薬や鎮静薬に対する過敏症の既往も検査を施行できない理由となる. 2.3.1 左室機能と壁運動の評価 左室全体の観察には経胸壁心エコー法のほうが適しており,経食道心エコー法で評価する必要性は低い.経胸壁心エコー法で左室の描出が困難または不十分である場合や,心大血管疾患術中評価には経食道心エコー法が適応となる.単一の断面で評価することなく,多断面を描出して評価する必要があり,多断面を同時に評価できる3D心エコー法が活用できる.経食道心エコー法では,プローブから遠 22 24 23 20 21 B. 経胃断面像経胃僧帽弁短軸像(10~30度, 胃内に挿入して,プローブを強く前屈)経胃二腔像(90度,経胃僧帽弁短軸像から角度を上げる) 20 21 C. 下行大動脈像下行大動脈短軸像(0度,中部食道四腔像からプローブを反時計方向に回転)下行大動脈長軸像(90度,下行大動脈短軸像から角度を上げる)上部食道大動脈弓長軸像(0度,下行大動脈短軸像からプローブを手前に引く) 22 23 24