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p.16 抽出テキスト

ど短時間作用型静脈麻酔薬で鎮静する.これらの薬物は血圧低下や呼吸抑制を引き起こしやすいため,経皮的酸素飽和度を含めたバイタルサインを経時的に計測する.検査施行医とは別の医師や看護師が患者の監視に専念することを推奨する.患者急変に備えて,気管挿管を含めた心肺蘇生ができるように準備を整えておくべきである.キシロカインアレルギーの症例では静脈麻酔を行い,キシロカインを含まない超音波検査用ゼリーで代用する.

2.2.2 プローブの挿入と使用後の処理

患者にマウスピースまたはバイトブロックを咥えさせ,口腔内に唾液が貯留しないように姿勢を調整する.口腔から気管を直線上に保ち,顎をやや前方に引くsniffing positionでプローブを挿入する.検査中はビニール製プローブカバーを使用することが推奨される.プローブを口腔内に挿入する際には前屈させ,嘔吐反射を誘発しやすい咽頭後壁に接触させないように挿入する.プローブを門歯から約16~18 cm挿入して,気管と食道の分岐部である喉頭蓋近くで保持する.意識のある患者では嚥下動作とともにプローブを後屈させて,スムーズに挿入する.プローブが気管に入ると咳嗽が誘発され,梨状窩に当たると挿入に抵抗を生じる.この場合,プローブを一旦手前に戻し,再挿入を試みる.プローブが食道内に到達すると,抵抗なく挿入できるようになる.プローブを上部食道から中部食道へと進めて,次項に記載した基本断面を順に描出していく.プローブを抜去する際には,水平断面像を観察しながらプローブを回転させ,胸部下行大動脈を描出する.大動脈を観察しながら,弓部大動脈が描出されるまで,徐々に引き抜いていく.大動脈弓部を観察した後にプローブを抜去する.

プローブカバーを使用しない場合には,検査後にプローブを流水で洗いながら,ガーゼで擦って粘液などの付着物を洗い流す.内視鏡用タンパク除去剤を使用してもよい.プローブカバーを使用した場合には,この工程を省略できるが,使用したカバーに損傷がないか確認する.その後,フラタールなどの消毒液にプローブを浸漬する.取り出したプローブは多量の水道水で消毒薬を洗い流した後,垂直に吊るして乾燥させる.プローブを滅菌する必要はないが,清潔に保てるように内視鏡収納棚を使用するとよい64).プローブの消毒・鎮静等,経食道心エコー法の実際に関しての詳細は,日本心エコー図学会「経食道心エコー図検査実施についての勧告(2018 年改訂版)」66) を参照されたい.

2.2.3 必要な解剖と基本断面

米国心エコー図学会(ASE)と心血管麻酔医協会(Society of Cardiovascular Anesthesiologists)は,経食道心エコー法で描出するべき断面像として基本28断面像を推奨してい

る67).成人患者の検査で重要な左心耳や心房中隔,僧帽弁の詳細な観察に必要な断面設定が十分ではなく,また上部食道像や深部経胃断面像のように覚醒下での検査に苦痛を伴うものが多く含まれる.左心耳の入口部から底部までの詳細な観察,バルサルバ負荷やコントラストエコーを用いた卵円孔開存の検出,僧帽弁交連部病変の詳細な観察に適した像を含めた基本断面像を提示した(図5).

2.3 適応と禁忌

侵襲性,検査時間,コストの面から考えると,経胸壁心エコー法で十分な情報が得られた症例に対しては,経食道心エコー法を施行するべきではない68).経食道心エコー法の推奨とエビデンスレベルを表6に示す.心房細動に対する除細動やカテーテルアブレーションの術前検査としての左房内血栓,特に左心耳内血栓の検索は経胸壁心エコー法では困難であることも多く,経食道心エコー法が用いられてきた.48時間以上続く心房細動において,経食道心エコー法を用いた除細動戦略と従来法(ワルファリンによる抗凝固療法を除細動前3週間行う)を比較する目的でACUTE試験が行われた69).同試験の結果で,除細動までの日数は経食道心エコー法群で有意に短縮されたことが示され(平均 3.0 日 vs 30.6 日),加えて8週間後の除細動成功率,塞栓症発症率,大出血発症率に差はなく,両群とも満足できる治療法と結論されている.したがって,経食道心エコー法を用いた除細動戦略は従来法と同様に受け入れられる治療法の一つであることが示された69-71).一方で,造影剤アレルギーのない症例においてカテーテルアブレーション治療の術前検査として心臓造影CT検査を施行する場合,左心耳内血栓の存在が否定的な症例に対しては,経食道心エコー法が省略されることも多くなっている(CQ).また,原因不明の脳塞栓症における心内塞栓源の検索でも経食道心エコー法が考慮される.奇異性塞栓症を疑うときには,右左シャントの存在の有無を明らかにする必要がある.経胸壁心エコー法あるいは経食道心エコー法において,カラードプラ法またはバブルテスト(バルサルバ負荷・咳嗽負荷を併用)を行って心房間シャントを証明することが奇異性塞栓症の診断に必須であるが,経胸壁心エコー法で所見が得られないときには経食道心エコー法を行う72).また,MR・MSの弁病変と重症度の診断にも有用であり,特に僧帽弁形成術や経カテーテル僧帽弁治療を考慮する症例には必須である73).大動脈弁疾患では,弁病変・重症度の評価,弁口面積の計測,大動脈基部の観察に用いられる.特に大動脈弁形成術を考慮する症例では術