p.55 抽出テキスト
じめ,上室頻拍,流出路心室期外収縮などのアブレーションにおいて,本システムの使用による被ばく線量低減が報告されている.本システムを用いた,前向き登録の心房細動アブレーションの1000例では,透視時間0.9分,線量345.1 cGy・cm 2と報告されている227). 専用ガイドワイヤは主に心室再同期療法の際の冠静脈洞リード挿入時に使用され,低線量の透視設定との併用で, 95%もの被ばく線量低減効果が報告されている228).また,アブレーションに際しても,心房中隔穿刺時に専用ガイドワイヤをBrockenbrough針に内挿して先端に留置すると,非透視下に針先端を視認しながら操作できるので,低被ばく線量での中隔穿刺が可能と報告されている229).あるいは心外膜穿刺の際に硬膜外穿刺針先端に内挿し,あらかじめ保存した冠動脈造影画像上で針先端を視認するといった工夫により,低被ばく線量での手技が可能である230). 6.4.3 透視画像と3次元マッピングの統合 類似のシステムとして,透視画像と3次元マッピングを統合するCARTO Univuがある.頻用する方向(左右前斜位など)の透視や,冠動脈,マッピングするチャンバーの造影を保存すると,3次元マップをその画像上に統合できるシステムである231).ただし,決められた角度でしか表示されないため,前述のナビゲーションシステムの代用とはならない.しかしながら,非透視カテーテルナビゲーションシステムやリモート磁気ナビゲーションシステムは,高額かつカテーテル室設計レベルからの整備が必要であり,保有する施設が限定されるが,CARTO Univuは従来のマッピングシステムに追加可能なモジュールであり,汎用性は高いと考えられる. ここまで述べた3次元マッピングシステム,カテーテルナビゲーションシステムはフローに精通した術者が使用することにより,被ばく線量低減に大きく寄与する.近年は上に述べたシステムを使用して「透視ゼロ」のアブレーションが可能とする報告もあり232, 233),特に小児や妊婦といった対象では,その利点が大きいと考えられる.しかしながら,穿刺やワイヤ操作を含む手技のどの局面においても,透視が必要となる可能性はある.ゼロ透視に固執するあまり,必要な確認を避けて患者をリスクにさらすことは慎むべきである. 6.5 特に注意を要する病態・疾患 複雑心奇形に伴う小児・成人先天性心疾患患者では,乳幼児期より繰り返しカテーテル検査を含む放射線被ばくを伴う画像検査を受けていることが少なくない.アブレーションに際して,通常と異なる心臓の解剖のため,頻回の 透視を要することも多い.解剖を術前に十分把握しておくことが必要である.またカテーテルナビゲーションシステムの使用は,被ばく線量低減とカテーテル操作の観点から,特に複雑奇形では有用性が高い. また,最も症例数の多い心房細動アブレーションでは,多くの施設で術前に心臓CT検査を行い,肺静脈形態,左心耳血栓,心外膜脂肪などの評価を行っている.3次元マッピングシステムへの統合が可能となったことが術中被ばく線量低減に寄与している一方,良好なCT画像の取得に必要な心電図同期の撮影により線量は増加する234). 心房細動の再発,心房頻拍・心房粗動などの出現により複数回のアブレーションを要することは少なくなく,反復する手技・術前検査による被ばく線量増加が懸念される.術前検査をCTからMRIへ切り替えることは一つの対策となりうる. 6.6 被ばく線量低減のための工夫 6.6.1 一般的注意点 カテーテル治療においては,最近の3次元マッピングの進歩により,心臓の解剖が正確に把握できるようになったこと,カテーテルと心筋との接触の強さを判断できるようになったことから,透視時間が最小限に抑えられるようになった.電極カテーテルは透視のパルス数,撮影のフレーム数を最小限に抑えても問題はない. 被ばく線量低減の3原則は時間・遮蔽・距離である.照射時間の短縮が最も効果が高いので,無駄な照射を極力避けて透視時間を最短にし,不要な撮影は回避すること. 散乱線の線量は線源からの距離の2乗に反比例して減衰するため,照射野から可能なかぎり距離をとることが必要である.また,直接線は散乱線よりも著明に線量が高いため,照射野に手指が入らないようにする.医療従事者の被ばくは主に患者からの散乱線によるものである.X線管側の散乱線の発生が多く,側面X線管を用いる際にはX線管は術者の反対側にあることが望ましい.患者の被ばく線量低減は術者の被ばく線量低減にもつながることを自覚する.不整脈治療においては左前斜位を用いて角度を固定するため,一定部位への被ばくが多い.また,心房・心室中隔を正面視するための極端な角度は線量増加につながるので,避ける必要がある. 心房細動のアブレーションの際,食道温度計を用いることも多く,コメディカルがその操作を行うことがある.透視下での操作は防護板のない状況であり,操作中は術者も