GL検索 v0.1.0
画像は 53 ページを描画したものです
page 53

p.53 抽出テキスト

6.1 電気生理学的検査・治療と被ばく

近年,心房細動に対するカテーテルアブレーションが急激に増加している.特により複雑な不整脈に対するアブレーションが増加し,手技時間が長くなり,複数回の手技を要する症例も経験される.また,正確な3次元情報を得るために術前に造影心臓CTやFPDを回転させながら撮影する回転血管造影も施行されている.これらにおいて患者の被ばくを認識することが重要である.

電気生理学的検査・治療では主に透視が使用され,撮影はほとんど行われない.また,ガイドワイヤよりもX線透過性の低い電極カテーテルを使用するため,透視のパルスレートを低下させて検査を行うことが可能である.これらのことは,PCIと比較すると防護上有利な要素であるが,カテーテルアブレーションでは放射線の照射角を固定させて透視を使用する可能性が高く,その場合は同じ部位に連続的に照射が行われる.とくに左前斜位で長時間照射が行われた場合には右肩甲骨下,右上肢に集中的に被ばくする可能性がある.

X線照射条件決定に関与しない照射野周辺に患者の上腕が入った場合も,X線管と皮膚間の距離が腕の太さ分だけ短くなり,皮膚入射面での線量が多くなる.さらに,腕がX線受像器中心部に入ると,腕の分だけX線照射条件が高くなるとともにX線管・皮膚間距離が短くなるため,照射野内にある上腕皮膚が受ける線量はきわめて高くなる.したがって,X線入射角度を変えたり,上腕を体幹部から離すなど,可能なかぎり上腕が照射野から外れるようにする必要がある.

不整脈治療においては心臓内の部位を正確に知るため,またカテーテルと心筋の接触の強さや接触方向などを知るために,透視が用いられることが多い.透視を最小限に抑えながらこれらの情報を得るために,3次元マッピングシステムが開発された.実際に3次元マッピングシステムの進歩により,透視の使用頻度は格段に低くなっている. 6.2 被ばく線量

電気生理学的検査,カテーテルアブレーション,デバイス植込み手技に伴う放射線被ばく線量には,報告により大きなばらつきがあるが,一般に中隔穿刺を行い左房へのアプローチを要する心房細動や,広範囲なマッピングを要する心室頻拍などでは,線量が多くなる傾向にある.心外膜穿刺を要するアブレーション手技も,穿刺や通電前の冠動脈造影を要するほか,穿刺針の確認のため頻回の透視を要する.2014年の欧州の報告による,主な不整脈カテーテル検査・治療手技における被ばく線量を表36に示す211, 212).

報告による線量のばらつきには,患者要因(体格・解剖など),使用機器,術者の経験などが関与するが,特に術者の被ばくに関する認識は重要な因子である.経験を積んだ医師が最適な透視設定で手技を行えば被ばく線量は少ない.術者・看護師・放射線技師・臨床工学技士といった,手技に関わるすべてのスタッフが被ばく線量低減に向けた意識をもつことが重要で,周知のためのレクチャーや,症例ごとの線量の報告と情報共有213, 214)が重要である.

6.3 3次元マッピングシステム

3次元マッピングシステムは1990年代に欧米で使用され始め,2000年にわが国に導入された.同時期に始まった心房細動に対するカテーテル治療にも早期から積極的に使用され215),治療成績や安全性の向上に大きく寄与している.

複数カテーテルの表示 最初に導入されたCARTO ® Unixはアブレーションカテーテルのみが表示可能であったが,EnSite ®システムは2006年当初からアブレーションカテーテルのみならずリングカテーテルなど診断カテーテルも表示が可能であり,透視下で行う肺静脈隔離・線状焼灼に比較して手技時間,透視時間が短いうえに,より高い成功率が得られることが報告された215, 216).カテーテルで心筋に接触してその3次元情報を記録することにより,正確

表36 不整脈のカテーテル検査・治療における患者の放射線量

放射線量(mSv)中央値(最小値~最大値)右前斜位での皮膚入射線量(mGy)平均値(最小値~最大値)左前斜位での皮膚入射線量(mGy)平均値(最小値~最大値)

電気生理学的検査3.2(1.3~23.9)アブレーション心房細動上室頻拍心室頻拍15.2(1.6~59.6) 16.6(6.6~59.6) 4.4(1.6~25) 12.5(3~≧45) 262(14~2049) 147(28~536) 129(38~271) 568(24~2599) 277(6~1104) 229(31~688) (Heidbuchel H, et al. 2014 211) および Seguchi S, et al. 2016 212) より作表)