p.51 抽出テキスト
5 四肢・末梢の血管内治療 表34 末梢血管の血管内治療における被ばく線量低減のための推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 医療従事者および患者透視時間を可能なかぎり短くし,適切な透視パルスレート,画像フレームレートを選択する(冠動脈治療と同一の装置を使用する場合,末梢血管に適切な設定に変更する)202, 203). I B患者をX 線管から可能なかぎり離し,X線受像器(フラットパネルディテクターなど)を可能なかぎり患者に近づけて,照射野を適切に絞る202, 203). I B体表面エコー法,血管内超音波法の併用を考慮してもよい204). IIb C医療従事者術者と放射線照射野が可能なかぎり離れるように穿刺部位を選択する202. 203). I B適切な防護デバイス(防護衣,防護眼鏡など)を使用する202, 203). I B術者の手が照射野に近づいたり映り込んだりすることを避ける202, 203). I B造影剤注入にオートインジェクター(自動分注投与装置)を使用し,撮影(とくにdigital subtraction angiography)時,医療スタッフは可能なかぎり照射部位から離れることを考慮する202, 203). IIa B 5.1 被ばく線量低減のための工夫 社会の高齢化と食生活の欧米化が進む中で,わが国における末梢動脈疾患の罹患率は上昇している.一方,昨今の急速な治療技術・機器の進歩に伴い,血管内治療(EVT)の適応が拡大している205).従来は血管外科医・放射線科医によって治療されることが多かった分野であるが,冠動脈疾患の合併率の高さやEVT適応の拡大などにより,昨今とくにわが国において循環器内科医が診療・治療にあたることが増加している.循環器内科医の多くは冠動脈インターベンション(PCI)には精通しているが,末梢動脈疾患のEVTに関する経験値は個人間・施設間で格差が大きい.効果的な被ばくリスク低減のために,EVT特有の被ばくリスクに関する知識の習得が必須である202, 203). 5.1.1 撮影方法 EVTで頻用されるdigital subtraction angiography(DSA)は,骨をはじめとする血管撮影に不要な画像要素をデジタル的に除去して,血管の情報だけを表示することにより,血管の情報をより鮮明に収集する.造影剤投与量を低減できる撮影方法であるが,被ばく線量が通常のdigital angiography(DA)と比較して高い.必要最小限の撮影に留める,可能であれば造影剤注入にオートインジェクター(自動分注投与装置)を使用して術者,助手,スタッフはいったん退室する,などの基本を徹底するべきである. PCIで用いられる小さなFPDでは,撮影範囲が狭く,結果として撮影回数が多くなることを念頭に起き,撮影方法を選択する必要がある. 5.1.2 アプローチ部位 EVTで用いる透視線量はPCIと比較するとやや低い傾向にあり206),一般的に被ばくリスクも低い可能性があるが,アプローチ部位によっては照射部位と術者や助手の距離が近くなることも多く,PCI施行時とは違った被ばく線量低減の工夫が必要となる. 下肢動脈の治療において,対側の大腿動脈からのクロスオーバー(山越え)アプローチは一般的に行われる手技であるが,右大腿穿刺→左下肢治療と左大腿穿刺→右下肢治療では,術者とFPDの位置関係が大きく異なる.右大腿穿刺から左下肢の治療を行う場合はX線管が術者から遠ざかることになるので,術者の被ばくリスクが高まることはないが,左大腿を穿刺し右下肢の治療を行うとX線管は術者側に近づくことになり,被ばくリスクは高くなる.左大腿穿刺→右下肢治療で術者への直接線照射を避けるには,FPDを抱え込むような形で手技を行わなければならない場合もあり,被ばくリスク管理の観点からは避けるべきである.代替手段として同側大腿動脈を順行性に穿刺して治療を行うことが望ましい.治療戦略決定時に被ばくリスクを考慮に入れて穿刺部位を選択すべきである. また,逆行性アプローチなどを用いる複雑な治療手技では照射時間と線量が増加する207).さらに,穿刺箇所と術者(の手)が非常に近接する(場合によっては直接線の照射を避けられない)ため,順行性アプローチのみで成功できる場合と比較して被ばくリスクは高い.昨今,X線管近くで手技を行う術者の被ばくとの関連が疑われる健康被害の報告もあり208),直接線被ばくの可能なかぎりの回避,X線管との適切な距離設定,ゴーグルやグローブの着用,天吊り式防護板の有効利用,適切な透視パルスレート・画像