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p.49 抽出テキスト

業性も低下するコート型の防護衣で身体を覆うよりは,軽量のエプロン型防護衣を着用して,術中に患者に背中を向けないように注意すればよい.また,エプロン型はその重量が主に肩にかかるのに対し,セパレート型は肩と腰に重量が分散するため,術者の疲労が少なく作業性に優れる104–106, 197).【Q 11】 PCIを受ける患者の被ばく線量

PCI時の患者の被ばく線量を低減するにはどうすればいいですか. A 被ばく線量低減の原則を十分に理解している必要がある.すなわちPCI施行時に使用するX線など,体外にある線源からの線量低減の3原則は,1時間(照射時間を短くする:time),2遮蔽(放射線を遮蔽する:shield),3距離(線源から離れる:distance)である.各項目について検討して,それぞれの施設で可能なことから実施し,患者の受ける線量の低減に努めることが推奨される.また,合計透視時間や撮影フレーム数が同じでも,患者の体格,X線管の位置,X線の照射部位,入射角度,照射野に上腕がある,透視モードなど,さまざまな要因によって患者の最大皮膚吸収線量が大きく異なることにも留意する必要がある19, 181, 198).【Q 12】 PCIの反復試行と被ばくの影響の蓄積

多枝病変や再狭窄を繰り返す病変に対しPCIを反復して施行する場合に,被ばくの影響は蓄積されるのでしょうか.蓄積されるのであれば,どれくらいの間隔を空ければよいでしょうか.また,放射線累積照射量が多くなってきた患者において,再造影検査などの検査の間隔を長くすることにより将来皮膚障害が生じにくくなる,ということはないのでしょうか. A 同じ線量であっても,一度に被ばくした場合と分割して被ばくした場合とではリスクが異なる.一般的には分割して照射した方が,細胞の修復機能が発揮されやすいので,健康への影響のリスクが小さいと考えられる.また,細胞の種類により放射線損傷の修復機能は異なり,癌細胞よりも正常細胞は修復機能に優れると考えられるので,放射線治療では一般に分割照射が行われる.これは線量率効果を利用したものである.近年では細胞を用いた実験で線量率効果を定量的に評価する試みもある.

しかし,PCIにおいて照射の間隔を空けることによる放射線影響の低減効果は,必ずしも明確ではない.したがって,患者が放射線により受ける影響は,確定的影響(組織反応)と確率的影響の2種類に分けて考え,患者の病状に応じた診療計画を策定する必要がある. 1)    確定的影響

PCIにおける放射線の影響については,確定的影響である放射線皮膚障害の防止が最も重要である.すなわち,

PCI頻回施行症例では放射線皮膚障害のリスクを可能な範囲で低減する必要がある.

われわれは放射線治療でのデータを基に(ICRP Publication 141〔2019年〕),湿性皮膚炎を生じるしきい線量の分割照射による変化を検討したところ,照射面積の減少,分割回数の増大に従って,湿性皮膚炎を生じる線量が大きくなった.ヒトの皮膚では,10 cm 2の面積に紅斑を生じるX線のしきい線量は,1回短時間被ばくの場合には6~8 Gy,多数回分割照射で30 Gy以上となる.一方,放射線生物学的な修復過程の時間スケールとしては1000~10000秒(約16~160分)とされているので,それ以上に間隔を空けてもリスク低減効果は小さいと推察される.すなわち,同じ線量でも,分割照射したほうが,また照射範囲が狭いほど,皮膚への影響は起こりにくい.

放射線皮膚障害の重篤化を避けるという観点からは,術後に十分に観察期間をとって対応を準備しておくことも有用である.被ばく線量が多かった手技の後は,可能であれば症状が出現する可能性のある期間,次回の手技を控えるべきである.いずれにしても,照射野を小さくする方が放射線皮膚障害のリスクの低減効果は相対的に大きい.また,照射された皮膚の範囲を把握しておくと,次回に照射する場合に放射線皮膚障害のリスクを小さくできる.放射線を照射する皮膚の領域を変えれば,少なくとも累積線量が大きく増加することはない. 2)    確率的影響

累積された被ばく線量の健康リスクは必ずしも明らかではない.ただし,線量が累積されても,そのリスクは治療を行わなかった場合の冠動脈疾患のリスクに比べるとはるかに小さいと考えられる.したがって,患者の年齢が低いなどの特別な事情がなければ,確率的影響のリスク制御の意義は相対的には小さく,照射間隔のみにこだわることに明確な利益はないと考えられる199, 200).【Q 13】 PCI時のインフォームドコンセント

患者が安心してカテーテル検査・治療を受けられるようにするために,放射線障害についてどのように説明するべきでしょうか. A PCIは手技の時間が長くなると放射線皮膚障害が発生する可能性があり,それに関する十分な説明が必須である.インフォームドコンセントのマニュアルなどを作成し,施設における説明内容を統一しておくことが大切である.放射線の影響の説明では,専門用語と数値を羅列するのではなく,患者は何に不安を抱いているのかを理解し,安心できるような説明を心掛ける.具体的には次のような内容を説明するとよい.