p.38 抽出テキスト
置によるSPECT検査を実施する際にこの手法は推奨されないと考えられる.一方,半導体装置を用いた2核種同時収集のプロトコル153)において,安静時99mTc製剤150 MBq,負荷時201Tl製剤50 MBqを用いることにより,1検査あたり約8.2 mSvの被ばくで検査が可能である. b. 99mTc製剤を用いたプロトコル わが国のDRL(DRLs 2015) 29)において99mTc製剤2回投与検査のDRLを1200 MBqとしており,この投与量を遵守して行うかぎり,安静先行,負荷先行のいずれのプロトコルでも実施可能である.また,半導体装置による14分間収集を用いた99mTc製剤1日法のプロトコルにおいて1 mSv以下の被ばく線量に抑えたとする報告もある154). 負荷検査のみを実施するstress-only imagingでは,負荷後に画像を確認し,明らかな心筋血流低下がないと判断した場合は安静時検査を省略する.負荷時の撮像後に画像読影を行って安静時撮像の省略の可否判断を要するため,運用上のハードルはあるが,負荷時の画像に異常がなければ安静時の撮像を行う特段の理由はない. 99mTc製剤による心筋血流SPECT検査では負荷時と安静時で1回ずつ核種を投与するため,特に1日法のプロトコルにおいて安静時撮像を省略できれば,被ばく線量を大幅に低減できる151).わが国ではstress-only imagingにより全症例の約2/3で安静時検査を省略できたとする報告155)があり,被ばく線量の低減に大きく寄与している. 負荷時の画像のみで確実に正常と判断するために,画質の確保と診断精度を高く保つ目的で負荷時の投与量を多くして運用することも考えられる.しかしJSNCでは,心臓核医学検査における被ばくは確率的影響の領域であり,集団の被ばくを低減することが第一義であるとし,個別の検査において負荷時の投与量がいくらか多くても問題にならないとしている.また,前述の理由から同学会ではstressonly imagingの実施を強く推奨している150).SPECT検査に先行して冠動脈CTなどの検査が実施されている複合的な画像診断(sequential imaging)の臨床シナリオでは,より積極的に考慮すべき検査法と考えられる. 3.1.4 被ばく線量低減のための工夫 a. 医療従事者 わが国では金谷らが,心臓核医学検査を担当する医師のアイソトープ静注時の被ばくについて, 99mTc製剤555 MBqで0.20 μSv,740 MBqで0.33 μSvと報告している84).また, 99mTc製剤1200 MBqを用いた短時間プロトコルの検討では,検査を主導する者と手伝う者に分けて検討を行い,前者で6.2 μSv,後者で2.5 μSvと報告している156).両者の被ばく線量に違いを生じる原因として,検査時の動線,担当作業の違いが考えられる. 職業被ばくにおいて,時間・遮蔽・距離の3原則により被ばく線量低減を図ることができるが,超音波検査(特に心エコー)を実施する医療従事者ではこれが困難である. 201Tl検査後の検討では患者腹部表面で約0.3 μSv/minと報告されており,密着して検査を行う心エコーの術者でもおおむね同等と考えられる157).JSNCでは0.25 mm鉛当量の防護衣によって, 99mTc製剤の場合で約40%超の被ばく線量低減が得られることから,必要に応じて防護衣を使用することが望ましいとしている150).また,核医学検査をオーダーする医師への啓発を通じて,心エコー検査を核医学検査と同日に実施することを可能なかぎり避けるか,同日に実施する場合には心エコーを核医学検査よりも先に実施するような配慮が望ましいと考えられる. b. 患者 INCAPS研究151)では患者の防護のために下記の8項目の「best practices」が提示されている. 1 201Tl製剤の利用を避ける 70歳以下では201Tl製剤による検査を避ける.前述の検査プロトコルに記載のとおり,アンガー型装置を使用した若年者と70歳以下を対象とする検査では99mTc製剤が推奨される.小児においては,将来の確率的および確定的影響が大きくなることから,特に99mTc製剤は201Tl製剤に比べて放射線被ばくが少ないこと,また乳幼児の小心臓においてより明瞭な画像が得られることから, 99mTc製剤の使用が推奨される.小児における心筋負荷安静プロトコルにおいて, 201Tl製剤は99mTc製剤に比べて約8~10倍の被ばく線量が見込まれる. 2 2核種の利用を避ける アンガー型装置では201Tl製剤と99mTc製剤による2核種検査を避けることが望ましいとされる.わが国で行われている123I-BMIPPおよび123I-MIBGと201Tlの組み合わせによる2核種検査は,吟味された対象において検査を行うべきである. 3 99mTc製剤の使用量を適正化する 99mTc製剤の投与量を1332 MBq以下に抑え,実効線量を15 mSv以下に抑えるとしているが,「ALARAの原則」(p. 11参照)から適正な画質が得られる範囲で可能なかぎり少ない投与量が推奨される.わが国のDRL(DRLs 2015)では, 99mTc製剤2回投与検査のDRLを1200 MBqとしており,これを遵守することが推奨される. 4 201Tl製剤の使用量を適正化する 201Tl製剤の投与量を129.5 MBq以下に抑えることが推奨されている.わが国の「DRLs 2015」では201Tl心筋血流シンチグラフィがこの値を上回っていたが,今後大幅に値