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p.32 抽出テキスト

1.2 患者への説明

放射線診療には被ばくの危険性がつねに潜んでいることはいうまでもない.放射線防護の観点より,医療における「行為の正当化」と「線量の最適化」が図られなければならない.行為の正当化の条件は,放射線診療の便益が被ばくによる放射線障害の不利益を上回っていることである.医療を受ける患者に対し,放射線診療の便益性と危険性(放射線被ばく)について伝えることが重要となる.

2019年3月に「医療法施行規則の一部を改正する省令」が公布され,放射線診療に係る安全管理体制に関する規定について,2020年4月1日から施行されることとなった.これに伴い,各医療施設は診療用放射線の安全利用のための指針を策定することが必須となった.その内容の一つとして,「医療従事者と患者間の情報共有に関する基本方針」という項目があり,放射線診療を受ける患者に対する説明についての方針を記載することが求められている.これは,前述した放射線診療の便益性と危険性(放射線被ばく)について患者にしっかりと伝え,理解を得ることに他ならない.

しかしながら,放射線診療に関する情報を提供する医療者側の理解と患者の理解にはかなりのギャップがあるという報告もある123).そもそも放射線診療に限らず,治療を受

ける患者の背景や病態は多種多様であり,それぞれの患者と家族状況に即したリスクコミュニケーションが必要となる124).

放射線診療の便益とリスクに関する効果的なコミュニケーションは,適正な医療の一環である.適正な放射線診療の実践にはリスクコミュニケーションが重要な要素であることは,WHOからも発信されており125),法改正の根拠とも合致する重要事項である.

1.3 Q&A

【Q 1】 経過観察のため毎日行う検査

循環器疾患でICUなどに入院・入室している患者は,経過観察のために毎日,胸部単純X線撮影を行うことも少なくありませんが,繰り返す検査に伴う被ばくに関してはどのように考えるべきでしょうか. A 胸部や腹部の単純X線撮影での被ばく線量は,CT検査などと比較すると低い.しかし,患者の被ばく線量の大小だけでなく,診療上必要な経過観察ための検査としての正当性が重要である.必要と判断された場合,患者の診断目的を達成しうる画質を得る一方で,線量の最適化は必須である.

図21 ポータブル撮影における病室の線量分布

管電圧 120 kV,稼働負荷 4 mAs

胸部臥位床上 90 cm胸部座位床上 90 cm

1 m単位:μSv