p.31 抽出テキスト
第3章 放射線被ばく管理の実際 1 胸腹部単純X線検査 表19 単純X 線撮影における被ばく線量低減のための推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 医療従事者 介助者は患者から2 m 以上離れる120). I B散乱線の線量分布図を示すことを考慮する121). IIa C患者最新のイメージングモダリティを用いることを考慮する122). IIa B被ばくに関する危険性の患者への説明個々の患者と家族の状況に即したリスクコミュニケーションを行う123–125). I C 1.1 被ばく線量低減のための工夫 1.1.1 医療従事者 単純X線撮影における医療従事者の被ばくは,静止姿勢保持が困難,単独で立位を保持することが危険,撮影体位の保持が難しいといった患者の,介助者となった場合がほとんどである. 衝立などの防護用具を使用することが現実的でない場合は,適正な照射条件の選択とX線源から適切な距離を取ることが一般的な防護措置である. 医療法では,「移動型及び携帯型エックス線装置並びに手術中に使用するエックス線装置にあっては,エックス線管焦点及び患者から2 m以上離れた位置において操作できる構造とすること」120)とされており,患者の家族や介助者,訪問者はX線管容器および患者から2 m以上離れることが 推奨されている.図21は病室ベッド上での患者胸部臥位および座位で撮影時の空間線量分布である121).患者のベッド周辺から2 m以上離れればほとんど検知できない線量となり,防護衣を着用しなくても十分安全であることがわかる. 1.1.2 患者 循環器領域における単純X線検査での撮影部位は胸部や腹部が大半で,IVRやCT検査と比較して撮影線量は低い.DRLで比較した場合,数値の性質は異なるものの, IVRは20 mGy/min(透視線量率),CT検査は胸部1相で15 mGy(CTDIvol),上腹部~骨盤1相で20 mGy(CTDIvol)であるのに対し,胸部単純X線撮影(正面)は0.3 mGy,腹部単純X線撮影(正面)3.0 mGyと線量が低い.さらに近年は,フィルムでのアナログ撮影に代わり,コンピューテッドラジオグラフィ(CR)やフラットパネルディテクター(FPD)によるデジタル撮影がほとんどとなっている.FPDでの撮影はフィルムやCRよりさらに被ばく線量低減が可能といった報告もある122). しかしながら,集中治療室で治療を受けている患者などは,経過観察のためほぼ毎日撮影することもまれではない. 1回の撮影線量は低いが,日ごとに累積するため,主治医は検査の正当性を認識したうえで撮影依頼を行うべきである. 成人では100 mGy以下の被ばくでも癌の発生率が上昇するかどうかは科学的に不明確であるが,小児が成人と同等線量の放射線を被ばくした場合,その影響は同じではない.特に確率的影響において,低年齢での被ばくほど将来癌になる確率が高くなり,0歳から6歳くらいまでの乳幼児の被ばくでは,20歳から60歳くらいまでの成人の被ばくに比べて,固形癌と白血病の発症率とすべての癌による死亡率が2~3倍程度に高くなると評価されている126, 127). 単純X線撮影での放射線は低線量であり,組織反応の懸念は少ないものの,確率的影響を念頭に置いて検査を行うことが重要である.