p.28 抽出テキスト
メントが出されている. 1) 高線量の被ばくが乳癌発症リスクを増加させることは 確実であり,そのリスクは若年期に被ばくした場合に最も高い108). 2) 頻回のX線検査や胸部への放射線療法などの医療被ば くが,乳癌発症リスクを増加させることはほぼ確実であり,そのリスクは若年期に被ばくした場合に高い109). 3) 低線量被ばくが乳癌発症リスクを増加させるかどうか は結論付けられない110).以上より,医療従事者も若年からの被ばく,頻回の被ばくを防ぐ必要がある. 乳房の防護には防護服が有用である.放射線を遮る割合は鉛を基準(鉛当量)として表示され,鉛当量が0.25 mmと0.35 mmの防護衣がある.一般的にIVRやCT透視などで使用する放射線の強さでは,検査室内に散乱する放射線を鉛当量0.25 mmの防護衣では90%,0.35 mmでは95%遮蔽する能力を持っている.鉛当量0.25 mmの防護衣に比較し,0.35 mmの防護衣では遮蔽効果が高いが,防護衣の重量が増す.腰への負担を軽減するためには上下セパレートタイプが適しているが,介助などで同じ場所に立つなど,放射線を受ける体の面が患者の方に固定される場合は,背面が開いたエプロン様の形状でも十分に防護できる.各自の診療状況に合わせて防護衣を選択する必要がある. 3.6 頭部 インターベンション施行医で頭頚部癌が発症した症例のうち,左側に発症した割合が85%と報告され111),照射線源が術者の左側にあることから,被ばくによる影響が懸念された.しかし,報告された論文が少なく,明らかな関係は不明瞭である. 頭部に放射線防護キャップをつけた研究では112),明らかな被ばく線量低減は得られず,有用性については不明確である.防護板などによる装置側の遮蔽,使用放射線量自体の低減を徹底する必要がある. 3.7 手技内容の共有 関連するすべての医療従事者があらかじめ手技を知ることは,適切な防護に役立つ.当日の手技の概略を事前に医療従事者間で共有できるように説明する必要がある. ほとんどの病院では手術の前などに「タイムアウト」を導入し,医療安全に役立てている.放射線診療も手術と同様に,医師,看護師,診療放射線技師,臨床工学士などのさまざまな職種の者が関与する.当日の手技の概略を事前に術者が説明し,あらかじめ手技内容の情報を共有するこ とは,患者情報の収集ミスの防止にもつながり,より安全な放射線診療を可能にする.手技の行程表が事前に用意されていれば,防護板と清潔ビニール,防護眼鏡などを的確に準備でき,適切な術者の立ち位置の事前予測も可能である. 4 女性医療従事者の胎児の被ばく 表15 妊娠中の女性放射線業務従事者の被ばく管理に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 胎児の被ばくの危険性を認識する113). I B各種撮影法による胎児の被ばく量を把握する113). I B医療従事者本人に対する放射線安全管理を行う113). I B 4.1 胎児被ばくの危険性 ICRP Publication 84「妊娠と医療放射線」(2000年) 113) では,冒頭の緒論の中で「数千人の妊娠している患者や放射線作業者が,毎年,電離放射線に被ばくしている.知識の不足のため,大きな不安と,おそらくは不必要な多くの妊娠中絶が生じている.胎児に正当化されないリスクの増加をもたらし,適切でないと考えられる被ばくもあるが,多くの患者にとって被ばくは適切なものである」と述べている.このことは,胎児に対する放射線被ばくの危険性が過大評価されている可能性を示している.しかしながら, Publication 84 では「妊娠している患者に対する医療被ばくは,日常的な放射線診療に比べてより多くの倫理的な配慮がなされる」とも記載されている. 胎児に対する放射線被ばくで問題となるのは,しきい線量を超えた被ばくにより奇形や遺伝子異常などが生じることである.その影響の結果は胎児期により異なり,胎児死亡,奇形,精神遅滞などがある.ICRPは100 mGy以下では胎児への影響はないとしている.また,10 mGy以上の被ばくにより白血病やその他の癌の発生が増加する可能性がある.胎児期の被ばくの影響は成人に比べて2~3倍大きいと考えられており,被ばく線量の増加に伴って癌の発