p.27 抽出テキスト
3.3 皮膚 表14 放射線業務従事者の皮膚防護のための推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 皮膚等価線量が年間500 mGy を超えないように管理する97). I A 医療従事者の皮膚の線量限度は500 mGy/年である97).皮膚癌については,業務上疾病の労災認定基準は定められていないが,慢性放射線皮膚障害については,以下のとおり認定基準が定められている98). 1 3ヵ月以上の期間におおむね25000 mSvまたはこれを超 える線量の電離放射線を皮膚に慢性的に被ばくした事実があること. 2 開始後おおむね数年またはこれを超える期間を経た後 に発生した疾病であること. 3 乾性落屑などの症状を経過した後に生じた慢性潰瘍ま たは機能障害を伴う萎縮性瘢痕が認められる疾病であること.手指の被ばく線量を測定するための指輪型の個人線量計がある.繊細な手技を行う際には違和感があるかもしれないが,照射野近傍に手指を置いて操作する場合,手指の被ばく線量は体幹部に着用した個人線量計が示すよりも多いことが予想される.そのため,被ばく線量が最大となる手指に指輪型の個人線量計を装着し,皮膚(手指)の線量限度である年間500 mSvを超えないようにする被ばく管理が必要である.手指に装着できない場合は,手首に装着するタイプの線量計も有効である99, 100). 手指などが照射野に入ることの多い手技の場合,術者は散乱線による被ばくの低減のために,可能ならば防護手袋 を利用する.清潔手技に対応した防護手袋は,散乱線の被ばく低減には効果的であるが,術者の手が透視されるような直接線被ばくの低減を考えて開発されたものではない.ほとんどの透視装置には被写体の大きさに応じて自動的に画質を調整する自動調節機能があるため,術者の手が患者の上に乗ると装置は体厚の大きな被写体になったと判断して自動的にX線量を増加させる.また,照射野の近くで心臓マッサージをするなど,清潔状態で使用しなくてよい場合には,遮蔽能力が一般的な防護衣と同程度の0.35 mm鉛当量の手袋を使用する. 3.4 甲状腺 甲状腺に関しては医療従事者の線量限度は設定されていない. 厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」の報告101)では,原発事故による放射線被ばくによる甲状腺癌発症リスクの上昇が報告されているが102),甲状腺癌の発症が統計的に有意に増加する最小被ばく線量を示す報告は認められなかった.甲状腺癌を含む全固形癌を対象とした原子放射線の影響に関する国連科学委員会などの知見では,被ばく線量が100~200 mSv以上において統計的に有意なリスクの上昇は認められるものの,発癌リスクの推定に用いられる疫学的研究方法はおよそ100 mSvまでの線量範囲での癌のリスクを直接明らかにする力をもたないとされている.よって,累積被ばく線量が100 mSv以下になるように,放射線防護が必要である.甲状腺癌に関する報告では,原発事故後5年目から9年目の期間以降で甲状腺癌発症リスクが有意に上昇したとするものがある103). ネックガードは甲状腺の防護を目的として装着する防護用具で,防護衣と同じ含鉛シートで作られている.0.25 mm鉛当量の含鉛シート製ネックガードは防護衣と同様に約90%の遮蔽効果があり,着用する必要がある104–106). 3.5 女性に関する事項 女性の乳房について,放射線障害の組織加重係数はICRP Publication 60(1990年勧告)の「0.05」がPublication 103(2007年勧告)で「0.12」に改訂され,よりいっそうの被ばく防護が必要となった.乳房に関して医療従事者の線量限度は設定されていない.患者被ばくを防ぐ努力が医療従事者の被ばく防護につながる. 日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン2018年版」107)では,被ばくと乳癌との関係について以下のようにステート 図18 眼の水晶体用の線量計(株式会社千代田テクノル 提供)