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p.96 抽出テキスト

1.4.4 治療法

表33 外傷性大動脈損傷の治療選択の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

侵襲的治療を要する場合は,解剖学的要件を満たしていれば,外科手術よりもTEVAR を優先する.(表9,P. 54,および表56,P. 160 を参照) I C全身状態が比較的安定している場合は,多発外傷併発の有無にかかわらず,緊急手術よりも待機的手術を優先的に考慮してもよい. IIb C多発外傷を伴っている症例では,複数領域の専門医からなるチーム医療の形成が必要であり,各損傷に対する治療の優先順位の決定と大動脈損傷に対する治療介入のタイミングの決定は,チーム医療の中での合意形成が有用である.治療経過における血圧管理は重要であり,平均拡張期血圧は80 mmHgを超えないことが肝要である1041, 1042).

確立された侵襲的治療としては,右側臥位,左後側方開胸,部分体外循環下での胸部下行大動脈の人工血管置換術が一般的である.近年では,TEVARが開胸手術に比較して,より低侵襲であり治療成績も優れているとする報告が増えており,大動脈の解剖学的要件が満たされればTEVARが治療の第一選択として推奨される1040, 1043).

1.5 医原性大動脈解離

医原性大動脈解離は,冠動脈カテーテル治療,開心術, TEVAR,末梢血管病変への血管内治療,大動脈内バルーンパンピングなどの治療に伴って発症しうる大動脈の病態である.まれではあるが心臓カテーテル検査中にも発症することがある1044, 1045).上行大動脈,特に右冠動脈近傍に内膜tearが生じ,末梢に解離が進展する病態が比較的典型的である.ときに近位側にも進展し,大動脈弁閉鎖不全や心タンポナーデをきたしうる.造影剤が大動脈壁内に停留することでも診断できるが,経食道心エコー検査やCT検査で確実に診断できる.

カテーテル関連の大動脈解離については,治療管理指針が必ずしも標準化されていない.一般に腹部大動脈,末梢血管,または大動脈弁尖付近に限局した解離の場合には保存的治療がなされることが多い.ただし,冠動脈入口部狭窄をきたした場合には,冠動脈内ステント留置が必要となる.大動脈解離が数cm以上にわたり上行大動脈内に進展した場合には,緊急手術による大動脈人工血管置換術が必要となることもあるが,破裂をきたすことはまれである.

開心術中に発症する大動脈解離の好発部位は,送血管挿入部位,心筋保護液注入部位,そして大動脈遮断部位である1046).診断は,直視下の観察で上行大動脈に暗紫色の色調変化,術中経食道心エコーによるフラップの同定,末梢血管での動脈圧低下によって気づかれることがある.送血操作に伴って大動脈解離が発症した場合には可及的早期に送血流路変更を行う.治療としては,上行大動脈,さらには弓部大動脈の人工血管置換術を考慮する.

2 Stanford A型大動脈解離

2.1 治療適応

表34 Stanford A 型大動脈解離の治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

偽腔開存型の症例には緊急外科手術を行う68, 1047, 1048). I B偽腔閉塞型の症例には緊急外科手術を考慮する1049–1053). IIa C偽腔閉塞型の症例には内科治療を考慮する1031, 1054–1056). IIa C

上行大動脈に解離が及ぶA型解離はきわめて予後不良の疾患で,発症後に致死率が1時間あたり1~2%上昇すると報告されており68),侵襲的治療(外科手術/TEVAR)を行わなければ48時間以内の致死率が約50%とされる.主な死因は破裂,心タンポナーデ,心筋虚血,脳虚血,腸管虚血などである1047, 1048).後述する一部の解離を除いて,内科治療の予後はきわめて不良で,緊急侵襲的治療,なかでも緊急外科手術の適応である.ステントグラフト単独による治療(TEVAR/EVAR)はごく一部の施設で行われているが,有効性は明らかではなく,現時点では一般的な治療とは言い難い.

緊急手術を施行するにあたり,意識障害(昏睡),心タンポナーデによるショック,心筋虚血,malperfusion,脳虚血は術後死亡の重要な予測因子である.なかでも神経症状または意識障害があるA型解離において,手術が予後を改善するか,手術自体をするべきかどうかは議論がある1057, 1058).脳虚血合併例は一般的には予後不良であることが多く,手