p.93 抽出テキスト
PQ 9 1 総論 1.1 定義と分類 大動脈解離の定義と分類については,第1章の「2.1. 定義」(P. 16~)と「2.3. 分類」(P. 17~)を参照されたい. 偽腔閉塞型大動脈解離は偽腔開存型と比較して予後が良いとされるが,ULP型の予後は両者の中間であり,病態が不安定な例を含んでいる.このため本ガイドライン2011年改訂版では,ULP型には偽腔開存型に準じた対応を推奨していた1).しかしながら,ULPの位置や大きさと予後との関係は十分に明らかではなく,一律に偽腔開存型に準じた対応を推奨する根拠もない.また,2011年改訂版では,偽腔の大部分が血栓化していても偽腔に血流を確認できる例(thrombosed false lumen communicating with true lumen)は偽腔開存型に分類するとされたが,この病態とULP型の境界も明瞭ではなかった.さらに近年,欧米から一部に血栓を形成している例(partial thrombosis)がB型解離の偽腔拡大因子として報告されているが1025, 1026),この多くは本邦のガイドライン2011年改訂版におけるULP型である可能性が指摘されている1027). 以上から本改訂版では,ULPの定義を暫定的に,偽腔内の造影される部分で大動脈長軸方向の広がりが15 mm未満のものとし,偽腔の大部分が血栓化していても開存偽腔が頭尾側方向に15 mm以上(5 mmスライス厚CT横断像にて4スライス以上)広がるもの(偽腔開存型に分類される)やpartial thrombosisなどとは明確に区別することとした.今後,これらの病態とULP型の予後の差に関する知見が蓄積されることを期待する. ULP型大動脈解離をどのように扱うか 推奨ULP型は偽腔開存型の一部として扱い,画像診断でのフォローを含め,厳重な経過観察が必要である. 潰瘍様突出像(ULP)とは,主に大動脈解離の画像診断における画像所見の表現の一つであり,造影CT検査や血管造影検査において「閉塞した偽腔における頭尾方向の広がりが15 mm未満の造影域」と定義される.ULP型解離は,「ULPの存在」にて偽腔閉塞型解離と区別され,「ULPの長径はおよそ15 mm未満」とすることで偽腔開存型解離と区別される. 欧米で用いられる「intramural hematoma(IMH,壁内血腫)」という言葉と,本邦の「偽腔閉塞型」との差異に関してしばしば議論になる.近年では,IMHは原義から広がりをもつ言葉となり,ULPの併存を許容し,IMH with ulcer,IMH with ULPのように,本邦の「偽腔閉塞型およびULP型」がIMHに対応する概念となっている(P. 17 の表4を参照). ULPは,ULP型解離におけるprimary entryである可能性が示唆されている1028, 1029).また,経過中の拡大(開存型に移行する,あるいは瘤となる) 1030, 1031)と消退(縮小して 偽腔閉塞型に移行する) 1032)は,予後の指標となることから, ULP型解離の重要な観察ポイントである.ULPはしばしば穿通性動脈硬化性潰瘍(penetrating atherosclerotic ulcer,PAU) 33)との異同が問題となるが,両者の意味は異なる.PAUはそれが生じるまでのプロセスも含めての「病態の表現」であり,ULPは単に「画像上の形態の表現」であることを理解することは重要である. 第6章 大動脈解離の治療