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p.92 抽出テキスト

in situ人工血管置換術を第一選択とした報告が多い1001–1003).最近では腎動脈下の感染性大動脈瘤の手術成績は向上しており,早期死亡率は10~15%程度と報告されている1002, 1004).腎動脈上大動脈の感染瘤に対しては,その解剖学的な要因から,腎動脈下の感染性大動脈瘤に比して手術および再建が複雑となり,吻合部が多いため予後が悪いと考えられる.死亡率80%に達するという1005)報告もあるが,早期死亡率10~16%程度という良好な成績の報告もある998, 1006). ii. グラフトの選択

移植血管の感染再発を予防するために,使用するグラフトにもさまざまな検討がなされている.中でも凍結保存した同種大動脈グラフト(ホモグラフト)に関して,良好な早期および長期成績が報告されている1007–1009).Vogtらは感染性大動脈瘤と人工血管感染に対して,凍結保存した同種大動脈グラフトをin situに移植した症例と,人工血管をin situまたは非解剖学的バイパスとして用いた症例とを比較し,特に感染の制御に関してホモグラフトがきわめて有効であったとしている1007).Lescheらはホモグラフト移植後の平均3年間の追跡において閉塞や瘤化は17%と報告しており,いずれも感染とは無関係で容易に再手術が可能であったとしている1008).移植されたホモグラフトの耐用年数に関して10年以上の成績はいまだ不明であるが,感染性大動脈瘤においては早期の感染制御が救命のために必要であり,この点においてホモグラフトは優れた材料であると考えられる1009).

これまでは日本国内でのホモグラフトの入手は困難であったが,臓器移植法の施行に伴う組織提供の広まりや組織バンクの活動により,一定条件下で保険適用になり,今後さらに普及していくことが期待される.

この他に,抗菌薬に浸漬した人工血管1010)や自家大腿静脈1011)の使用が散発的に報告されているが,通常の人工血管に対する優位性に関しては不明である. iii. 大網充填

大網は血流とリンパに富む組織で感染制御に有効と考えられており,開心術後の縦隔炎の治療にもしばしば用いられている1012).感染性大動脈瘤の手術においては,in situに移植した人工血管の周囲を大網で被覆して感染の波及を予防する.右左どちらかの胃大網動脈を血管茎とした有茎

大網は,胸部から腎動脈下までの広い範囲の大動脈に対して使用することが可能である1013). iv. 術後抗菌薬治療

術後の強力な抗菌薬治療は必須である.起炎菌に合わせた抗菌薬を静脈投与し,炎症反応の陰性化を目標に6週間から8週間は継続する.その後は抗菌薬を中止して問題ないとする報告もあるが1001),一方で生涯にわたり経口抗菌薬を投与すべきとする報告もある998, 1013). c. 血管内治療

近年,下行TAAや腎動脈下AAAに対するステントグラフトによる血管内治療が急速に普及している.感染性大動脈瘤に対して血管内治療を行い,強力な抗菌薬治療を併用することで治癒させえたという報告が散見される1014–1016)が,救命に至らないことが多い.感染巣と人工血管が隣接し,感染巣が閉鎖腔として残存するこの治療法は,感染増悪のリスクを有し禁忌との意見もある1017).しかしながら,破裂を予防し,次の人工血管置換術に向けてのブリッジ治療としての意義は認められている.

2.7 外傷性大動脈瘤

本項ではまれな腹部大動脈の外傷について記載し,比較的多い胸部大動脈の外傷については,別項(第6章の「1.4 外傷性大動脈損傷」,P. 95)に記載する.

腹部大動脈の外傷はまれであり,文献も症例報告やそのレビューが大半である1018–1021).鋭的外傷と鈍的外傷に大別され,鋭的外傷の原因は欧米の報告では銃創が大半であり1019),刺創の場合には深い位置にある大動脈の損傷は少なく,それ以外の臓器損傷が多い.鈍的外傷の原因はシートベルトによる損傷を含む交通事故が大半である1020–1022).

診断については,他の外傷の診断も含めてCT検査の有用性が確立されているが,血行動態が不安定な場合には,開腹手術の準備をしながら診断を進める必要がある1023).

治療法は,血行動態が不安定な状態であれば迅速な開腹手術が優先される.比較的安定した状態であれば,塞栓術を中心とした血管内治療の有用性が報告されている1018, 1024).