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p.89 抽出テキスト

可能である.熟練した内視鏡医が大動脈腸管瘻を念頭に置くことによって,注意深い観察により人工血管や付着した血餅または外因性拍動性腫瘤を伴う,潰瘍,びらんを見出すことができる.しかし,内視鏡検査の主目的は,消化管出血の原因として他の病態を除外することでもある.血行動態が安定した患者のみに行うべきであり,大量出血に対応できるように,手術場で行うことも考慮する. c. 血管造影検査

循環動態の安定した患者では,血管造影時には瘻孔が血栓でシールされているため,大動脈腸管瘻の同定は通常困難である. d. 他の検査法

MRI検査,エコー検査,消化管造影検査などは,診断の補助にはなるが,正確な診断に至らないうえ,施行時間が長い.MRI検査やFDG-PET検査はグラフト感染の診断には有用であるが,大動脈腸管瘻の同定は困難であり,検査時間の観点からも循環動態不安定な患者には不向きである.

2.4.3 治療

保存的治療は常に致死的であり,外科手術が唯一の救命可能な手段である.活動性の出血か,一次性か二次性か,敗血症の有無,大動脈再建の吻合部位が,効果的な手術ができるか否かの重要な決定因子である.活動性出血を伴う循環動態が不安定な症例や敗血症の症例は,緊急手術の適応になる.前駆出血を伴う循環動態が安定した患者に対しては,大動脈腸管瘻の評価と施行術式のプランニングを熟考する.術前に尿管ステントを挿入しておくと,後腹膜の炎症が高度でも尿管損傷のリスクを減らすことができる.厳重にモニター管理し,できるだけすみやかに手術を行う.30%の患者は6時間以内に,50%の患者は24時間以内に再出血する961). a. グラフト抜去

大動脈瘤が閉塞またはすでにグラフトが閉塞していた場合や,術前のCT検査と血管造影検査で十分に側副血行路が発達している場合は,グラフトを再建せずに抜去だけでも可能なことがある. b. 解剖学的人工血管置換

感染が大動脈側に波及しているかどうかにもよるが,軽度汚染であれば局所の清拭と,凍結保存血管,リファンピシン浸漬人工血管などで,解剖学的血行再建を行うことが多い962).非解剖学的血行再建と比較した後ろ向きコホート研究では,手術死亡率に差はない963).後腹膜や大網で消化管とグラフトの分離に努めることと,抗菌薬の長期投与が考慮される. c. 自家静脈を用いた解剖学的血行再建

自家静脈による大動脈腸骨動脈再建では大腿膝窩静脈が使用される964).採取側の肢の静脈灌流不全による下腿コンパートメント症候群に注意する. d. 非解剖学的人工血管バイパス

感染が明らかな場合や,下肢血行と骨盤内血流で長時間にわたり遮断が必要なことが想定される場合に,選択されることがある965, 966).一期的に行う場合は腋窩–両大腿動脈バイパスを先行させ,腹部の大動脈の処理と消化管の再建を行う.大動脈は盲端にして,大網などで覆う.

15~25%で起こりうる非解剖学的バイパスの感染は,適切な抗菌薬投与により最小限にできる967).培養が陰性の場合は1週間で終了し,陽性の場合は4~6週間投与が推奨されている953). e. 血管内治療

EVARでは再発,新たな感染,出血を認め,29%が敗血症のため死亡している.予後不良患者の治療や,感染をコントロールして患者の状態を安定化させるまでのブリッジ治療に限定すべきである968).

2.5 炎症性大動脈瘤

表32 炎症性腹部大動脈瘤の診断と治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

炎症性腹部大動脈瘤が疑われる場合には,血清IgG4 を測定する969, 970). I C有症状例には,ステロイド薬などによる抗炎症療法を考慮する971–975). IIa C瘤径が男性では55 mm,女性では50 mmを超える症例で,解剖学的要件を満たしていれば,EVAR を第一選択として考慮する975, 976). IIa C

2.5.1 概念,病理,病因

炎症性AAAは,1935年に尿毒症をきたす原因疾患の一つとして報告され,1972年Walkerら977)によって初めて疾患概念が紹介された.腹部大動脈の瘤状とその壁の著明な肥厚,大動脈瘤周囲ならびに後腹膜に広範に及ぶ線維化,十二指腸や尿管など周囲腹部臓器との癒着を特徴とした動脈瘤である.腎動脈下に好発するが,胸部大動脈や内腸骨動脈,大腿動脈に生じたとの報告もある978, 979).

肉眼的には,腹側から観察すると白色の光沢ある硬い隆起性病変として認められる.病理組織学的には,外膜とそ