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p.88 抽出テキスト

2.3.9 特殊な腹部大動脈瘤破裂

AAAが下大静脈内あるいは腸骨静脈内に穿破した場合,大動脈大静脈瘻をきたし,AAA症例の0.22~6%に存在すると報告されている945).腹痛,腹部拍動性腫瘤,および腹部血管雑音が3徴とされているが,高拍出性心不全や肺塞栓で発見される場合もある.二重走査法やCT検査で確定診断を得ることができる.治療法としてEVARと外科手術が選択可能であるが,外科手術では大出血のリスクや肺動脈塞栓症のリスクがあり,EVARの方が低リスクである946).EVARのみで動静脈瘻を閉鎖できない症例に対する大静脈側あるいは瘻孔に対する血管内治療が報告されている947, 948).

2.4 大動脈腸管瘻

表31 大動脈腸管瘻の治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

大動脈瘤や大動脈再建の既往例で大量の消化管出血があれば,大動脈腸管瘻を検索する. I C保存的治療は致死的であるため,侵襲的治療を行う. I C大量出血または持続する出血を認める症例では,止血のためのブリッジ目的でEVAR を考慮する. IIa C

大動脈腸管瘻はまれな疾患であり,診断に難渋し,確立された治療法もなく致死的な転帰をたどることが多い912, 949).原因により一次性と二次性に分類され,その多くは十二指腸と瘻孔をきたす.大動脈腸管瘻全体の手術死亡率は21~40%である950).大動脈腸管瘻の古典的3徴は,消化管出血,腹痛,腹部拍動性腫瘤である.消化管出血64~94%,腹痛32~48%,腹部拍動性腫瘤17~25%の割合で認め,すべてを認めるのは11%にすぎない951).その他,背部痛,発熱,敗血症などがある.2/3の症例でHbが8 g/dL以下であり,1/4の症例では白血球数が10000/μLを超えている952).一次性,二次性大動脈腸管瘻で「herald bleed」と呼ばれる前駆出血を認める.これは血管攣縮と血栓形成により一次的に瘻孔が塞がれて止血される現象である.この前駆出血の段階で緊急入院となることが多いが,繰り返しエピソードを認めていることも多い.初期症状があるにもかかわらず,無治療の場合は50%が24時間以上, 29%が1週間以上の比較的長い経過をたどって,大出血に至る953). 2.4.1 一次性と二次性の違い

一次性大動脈腸管瘻は大動脈瘤,感染症,悪性腫瘍,外傷などが原因で発症するものである954, 955).一次性の発症率は0.04~0.07%であり956),AAAの0.69~2.36%に合併し,十二指腸と瘻孔をきたすものが8割以上で大動脈十二指腸瘻を形成する957).

二次性は,外科手術(人工血管置換術)またはEVAR後に腸管と瘻孔をきたすものである.グラフトの再建部位により瘻孔をきたす部位も異なるが,一次性と同様に十二指腸遠位側(62%)か空腸近位側に多い912).二次性の大動脈腸管瘻の発症率は0.36~1.6% 958, 959)であり,一次性より多く認める.大動脈再建から症状出現までの平均期間は4 (1.5~8.7)年である912).二次性大動脈腸管瘻は,さらにグラフト吻合部に発症するものとグラフト本体に発症するものとに大別される.グラフト吻合部に発症するものは大出血を認めることがあるのに対し,グラフト本体に発症するものは初期には感染徴候を認めて判明することが多い.発症機序としては,感染,拍動性圧力,腸管損傷などの手技的要因が考えられる.病因としては,患者,手術側両方の要因が関わっており,頻回の血管外科手術,創部合併症,グラフト感染,緊急手術,手術手技の問題などが挙げられる.また,近年EVAR後の大動脈腸管瘻の報告が増加している960).その発症機序としては,持続的なエンドリークを伴う瘤拡大,エンドリーク治療時の頻回のコイリングの影響,エンドテンション,ステントグラフト留置時の感染が考えられている961).

2.4.2 診断

診断方法は患者の循環動態により異なる.大量の消化管出血があるか,AAAの既往または治療(外科手術/EVAR)後であれば,常に大動脈腸管瘻を念頭に置くことが重要である.大量出血がある場合は試験開腹で診断がなされることがある.患者の循環動態が安定していれば,造影CT検査,胃食道内視鏡検査,血管造影検査によって診断される.CT検査が低侵襲であり初期診断として有用である. a. 造影CT検査

造影CT写真で大動脈周囲脂肪織の消失,グラフト周囲の液体貯留,軟部組織の肥厚,異所性のガス像,大動脈グラフト周囲の隣接する肥厚した腸管ループのひきつれ,大動脈から巻き込まれた腸管への造影剤の漏出を認めることがある. b. 胃食道内視鏡検査

内視鏡検査は急性消化管出血の処置には必須である.大動脈腸管瘻の同定ができなくても,他の出血源の除外が