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p.87 抽出テキスト

され,AAA破裂症例の救命に実臨床で貢献していることが,日本血管外科学会の集計によって示され,エビデンスも集積されてきている515, 932–934).

2.3.7 術後管理

EVARでも外科手術でも,AAA破裂に特徴的な重要な合併症として,腹部コンパートメント症候群と虚血性大腸炎,多臓器不全があげられる321, 922).加えて,心合併症や呼吸不全も生命予後に直結する重要な合併症として,術後管理において重要である. a. 腹部コンパートメント症候群

AAA破裂の術後7~20%に発生する926, 927, 942).腹腔内圧上昇により多臓器不全に陥り,さらに気道内圧上昇,心拍出量低下に至る.発症例は非発症例に比べ,30日死亡率が約2倍であったと報告されている.本症診断のために膀胱内圧を測定し,30 mmHg以上,または20 mmHg以上でかつ臓器不全がある場合は,早期の外科的減圧手術の施行が望まれる321, 922, 928, 942). b. 虚血性大腸炎

AAA破裂の1/5~1/3に発症し,発症すると致死率は高く(45~67%),AAA破裂例の死因の第1位は虚血性大腸炎であった.虚血性大腸炎の発症率はEVAR後23%に対して外科手術後42%という報告もあるため,疑わしい場合には早めの内視鏡検査が必要である922). c. 心合併症,呼吸不全

冠動脈疾患などの心疾患(急性冠症候群,不整脈,心不全)やCOPDはAAAに高率に合併しており,術前から存在する背景に加えて,循環動態や血液凝固能の急激な変動,低酸素状態,腹腔内圧上昇などが加わって発症する.緊急手術であるために術前情報が乏しい中,冠血流や心機能,呼吸機能に留意した術後管理が求められる.術直前と術後の心電図記録,術後の心血管リスク評価と管理が重要である321). d. 多臓器不全

循環動態不安定と虚血再灌流障害によって発生する.多臓器不全に至ったAAA破裂例の致死率は50~70%ときわめて高い922). e. 脊髄虚血と下肢虚血

まれではあるが,AAA破裂では脊髄虚血が発生することが知られている.高位での大動脈遮断や長時間の内腸骨動脈血流遮断に加え,長時間の低血圧状態などがその発生に関与しているのではないかと推察されている943).また,動脈硬化性あるいは塞栓に加えて長時間の血流遮断などにより,下肢虚血が併発・増悪することはまれではなく,適切に治療しないと下肢切断・死亡につながるため,術直後の下肢血流確認を推奨する321).

f. 合併症発症率

米国Vascular Quality Initiative(VQI)データベースによるAAA破裂の術後の各種合併症発症率は表29のとおりである944).腹部コンパートメント症候群や腸管虚血,多臓器不全の管理・早期対策といったAAA破裂特有の術後管理の観点からも,経験豊富な施設での治療が望ましい922).

2.3.8 手術後短期および長期生存率

AAA破裂に対する治療後の死亡率はいくつかのレジストリデータベースによると表30のとおりである.長期生存に関しては,治療後90日生存したAAA破裂症例は,待機的手術を受けた非破裂AAA例と比較して,5年生存率に有意差を認めず,その主たる死因が心血管イベントであることが報告されている856).術後長期にわたる心血管リスクに対する管理が重要である321, 929).

表29 腹部大動脈瘤破裂に対する侵襲的治療後の合併症発

症率

EVAR外科手術P 値

心合併症29% 38% 0.001肺合併症28% 46% <0.0001腎不全24% 38% <0.0001腸管虚血3.9% 10% <0.0001下肢虚血2.7% 8.1% <0.0001 (Ali MM, et al. 2015 944)より作表)

表30 腹部大動脈瘤破裂の治療後の死亡率

Vascunet VQI NCD

参加国欧州9ヵ国米国日本調査年代2005~2009年2003~2013年2011~2014年症例数7040 1165 6379観察指標手術死亡率院内死亡率手術死亡率(院内死亡率)全体31.6% 30.0% 17.6% (20.7%) EVAR 19.7% 25.0% 15.1% (17.9%)外科手術32.6% 33.1% 17.6% (21.0%) (Mani K, et al. 2011

931),Ali MM, et al. 2015 944),日本血管外科学会515, 932-934)より作表)