p.82 抽出テキスト
aneurysm sealing)という概念がある.PTFE(polytetrafluoroethylene)で覆われたballoon expandable stent周囲のポリマー充填ポリウレタンバッグを拡張して瘤内を完全にシールすることにより863),エンドリークや位置のずれ(migration)などの手術合併症を防ぐという方法である.先行する欧米での報告によれば,エンドリーク,ずれ,および瘤の拡大が予想以上に発生し,ESVSガイドラインでも適切に評価されるまでは,倫理委員会によって承認された臨床研究でのみ使用すべきとされている321).近年,このデバイスに類似した,中枢ネックにポリマーを充填する新しいデバイスが本邦でも承認された. b. ランダム化比較試験の結果 EVARは2002年にEUROSTARレジストリで初めてその有用性と安全性が示唆された864).その後,EVAR試験425),DREAM試験426),OVER試験854),ACE試験423)において,解剖学的要件に適合し,全身状態が良好な患者におけるEVARと外科手術のRCTが行われ,現在は初期成績だけでなく長期成績も示されつつある. i. 短期成績 EVAR 1試験はEVARと外科手術を比較した最初のRCTであり,60歳以上で最大短径55 mm以上の,解剖学的にEVAR,外科手術のいずれにも適した,全身状態良好なAAAを対象とした.30日死亡率(EVAR 1.7%,外科手術4.7%)と瘤関連死亡率(EVAR 3.5%,外科手術6.3%)はEVARの方が低く,両群間で6ヵ月後の全死亡率と瘤関連死亡率に有意差はなかった425). ほぼ同じ条件でのDREAM試験でも同様に,30日死亡率(EVAR 1.2%,外科手術4.6%)や瘤関連死亡率(EVAR 4.7%,外科手術9.8%)はEVARで良好であった.2年生存率はEVAR 89.7%,外科手術89.6%で有意差はなく,瘤関連死亡率はEVAR 2.1%,外科手術5.7%で,EVARで有意に低かった426). OVER試験では,30日死亡率はEVAR 0.5%,外科手術3%とEVARで有意に低く428, 854),2年後の全死亡率もEVARで低い傾向にあった. ii. 中・長期成績 EVAR 1試験では,4年後までの瘤関連死亡率は外科手術に比べEVARで有意に低かったが,8年後には逆転してEVARで有意に高くなった.主な原因は瘤破裂であった.再治療率はEVARで有意に高く,遠隔期全生存率はEVARが劣っていた317). DREAM試験では,瘤関連死亡率が6年後でEVAR 68.9%,外科手術69.9% 843),12年後でEVAR 38.5%,外科手術42.2%であり,いずれも差はなかった431).再治療回避率は6年後でEVAR 70.4%,外科手術81.9%,12年後でEVAR 62.2%,外科手術78.9%であり,外科手術が有意に 優れていた431). OVER試験では9年後の瘤関連死亡率はEVARで有意に高かったが,再治療率は有意差がなかった768).生存率, QOL,医療費,費用対効果は両群で差がなかった844). ACE試験では,平均3年間のフォローアップにて,外科手術とEVARの間で生存率に差がなかった(EVAR 82.4%,外科手術85.1%).再治療率はEVARで有意に高く(EVAR 16%,外科手術2.4%),瘤関連死亡率はEVARで高い傾向にあった(EVAR 4%,外科手術0.7%) 423). 上記の4 つのRCTのメタ解析432)によると,EVARでは30日死亡率が低く,全死亡率も0~6ヵ月の間で低かったが,その後の追跡期間では全死亡率に有意差はなかった.瘤関連死亡率は30日後から術後3年までは両者で差がなかったが,3年後からはEVARで高いという結果となった.再治療介入率はEVARが高かったが,OVER試験428)のように腹壁瘢痕ヘルニア,腸閉塞,その他の開腹に伴う合併症を考慮すると,両者の差は明らかでなかった.しかし,使用されたSGの多くは第1または第2世代のものであり,上記の結果の解釈には注意が必要で,新しい世代のSGによる成績を含めて考える必要がある.ただし,EVARでは術後8~10年に合併症の発生率が上昇し,EVARの優位性が保たれなくなることを考慮すると856),現状では長期生存が見込まれる若年者には外科手術を推奨するのが合理的である. EVAR 2試験は,外科手術には適さないフレイル患者(症候性心不全,弁膜症,COPD,慢性腎不全のいずれかを合併)のAAAを対象に,EVARと経過観察とを比較したRCTである857).EVAR後の周術期死亡率(7.3%)と全死亡率(64%)は予想より高かった.4年の追跡調査では瘤関連死亡率,全死亡率におけるEVARの優位性はみられなかったが437),15年間の追跡では経過観察群と比べてEVAR群で瘤関連死亡率が有意に低かった858). c. 本邦における現状と成績 本邦では当初,各施設において自作SGが用いられていたが,2006年に企業製SGが初めて保険承認され,以後EVARは増加の一途にある.日本血管外科学会の調査では,2006年にはEVARは手術全体の約2.7%にすぎなかったが,2014年にはハイブリッド手術も含めると55.7%であり,SGの使用が半数以上を占めている515, 865). 本邦では企業製SGの承認以降,ウェブを使用した追跡調査を義務付けている.2006年12月,関連11学会(現在10学会)はEVARを安全に普及することを目的として「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」(JCVSD)を設置し,施設基準・実施医基準・指導医基準からなる「腹部