p.78 抽出テキスト
PQ 8 大動脈瘤の最大短径が大きくなるほど壁張力が増大し761, 776),破裂する可能性が増大する(表23) 777, 778).瘤径の拡大速度も破裂のリスクに影響し,著しく速く拡大する大動脈瘤は破裂のリスクが高い.大動脈瘤の形状では,紡錘状よりも嚢状のほうが破裂のリスクが高い779).また,瘤の一部が突出している形状も破裂しやすい780, 781). 欧米で行われている疫学調査では,大動脈瘤破裂の発生率は女性が男性より3倍高く763, 782, 783),高血圧,喫煙, COPD合併がその発生率を高めるとされている764, 784, 785).特に喫煙に関しては,大動脈瘤破裂による死亡のリスクがタバコで6.5倍,葉巻で6.7倍,手巻きタバコで25倍上昇する19).AAAの家族歴がある場合は破裂のリスクが上昇する786).このような症例では侵襲的治療介入の対象を55 mm以下とすることに,一定の合理性がある. b. 大動脈瘤による末梢動脈塞栓のリスク AAAの3~29%に末梢動脈塞栓症が合併すると報告されているが787–789),AAAが末梢の塞栓源となるかどうかの予測は困難である. 2.1.5 画像でのフォローアップ スクリーニングで発見されたAAAは至適時期に治療することにより破裂死を減少させることができる765, 767).したがって,定期的な画像によるフォローアップが重要である.腹部エコー検査は,CT検査に比較し大動脈瘤サイズを過小評価するとされるが,大動脈瘤が小径(40 mm未満)の場合はエコー検査でのフォローが推奨される765).AAAの初回診断時におけるCT検査での最大短径が侵襲的治療の適応サイズ(男性55 mm以上,女性50 mm以上)である場合には,全身状態評価のうえ侵襲的治療を検討する. 50~55 mm未満の場合は3~6ヵ月ごと(または手術に向けて精査開始),40~50 mm未満の場合は6~12ヵ月ごと,30~40 mm未満の場合は1~2年ごとを目安にCT再評価(40 mm未満の場合は腹部エコー検査で可)を行い, 6ヵ月で5 mm以上の拡大速度の場合には全身状態評価の うえ,侵襲的治療について検討する.また,女性や喫煙者ではより短い間隔でのフォローアップも考慮する.AAAに対する侵襲的治療後の画像フォローアップについてはサーベイランスの項目に譲る(P. 174を参照). 2.1.6 侵襲的治療の適応 AAAの侵襲的治療の適応は最大短径で男性55m以上,女性50 mm以上が推奨されているが,年齢や体格,性別や大動脈瘤の形態・形状,拡大速度によって,最大短径40~ 50 mm未満のAAAへの侵襲的治療も考慮する場合がある. 腹部大動脈瘤は瘤径何mm以上で侵襲的治療の適応となるか推奨瘤径(最大短径)≧55 mmが侵襲的治療の絶対的適応であり,瘤径≧50 mmも適応として許容される.また,女性では破裂のリスクが高く,瘤径≧45 mmで侵襲的治療が考慮される. 無症候性のAAAに対する侵襲的治療は,破裂予防をその目的とする.一方,症候性AAAについてはすでに破裂している,または破裂が迫っている状況であり,侵襲的治療は救命を目的とする.また,嚢状瘤については形状により破裂リスクが高いと判断されることが多い.このため症候性AAAや嚢状AAAでは瘤径は侵襲的治療の適応基準とはならず,このPQではAAAの多くを占める「紡錘形の無症候性AAA」の侵襲治療適応について記述する. 瘤径40~55 mmのAAAに対するUK Small Aneurysm Trial 790)とAmerican Aneurysm Detection and Management 791)の2研究で,外科手術においては瘤径55 mm未満で人工血管置換術を行っても55 mmに至ってから行っても,生命予後は変わらないことが示された.また,治療のもう一つの軸であるEVARも同様に,Comparison of Surveillance vs. Aortic Endografting for Small Aneurysm Repair (CAESAR) 792)とPositive Impact of Endovascular Options for Treating Aneurysm Early (PIVOTAL) Study 793)の2研究において,瘤径55 mm未満で行っても55 mmに至ってから行っても生命予後は変わらないとの結果であった.これらの結果から,AAA瘤径≧55 mmに対する侵襲的治療(外科手術/EVAR)が欧米のガイドラインにおいてクラス1,エビデンスレベルAとされた.したがって,本邦においても瘤径≧55 mmが侵襲的治療の絶対的な適応となる. 一方,本邦における待機的手術の成績はきわめて良好で,日本血管外科学会からの報告内の手術死亡率は,外科手 表23 腹部大動脈瘤の瘤径別推定年間破裂率 最大短径 (mm)破裂率 (%/ 年) 40未満0 40~50未満0.5~5 50~60未満3~15 60~70未満10~20 70~80未満20~40 80以上30~50 (Brewster DC, et al. 2003 778)より改変) Copyright (2003) Society for Vascular Surgery and The American Association for Vascular Surgery., with permission from Elsevier. https://www.sciencedirect.com/ journal/journal-of-vascular-surgery