p.76 抽出テキスト
建して弓部大動脈にTEVARを施行するtype 2,弓部大動脈置換術+ETにTEVARを施行するtype 3,に分類している.type 1は人工心肺を使用せずに施行できる利点があるが,脳梗塞のリスクが上昇することが報告されている759). e. リスクを考慮した手術適応と術式選択 広範囲TAAの手術においては,常に手術リスクと合併症発症率を考慮して,手術適応,術式選択を考慮する必要がある. 2014年日本胸部外科学会学術集計によると,手術死亡率は手術範囲により異なる.非解離性大動脈瘤の院内死亡率は,手術範囲が上行・弓部に限定される症例では3.5%であるのに対し,弓部+下行大動脈では10.2%であり,手術範囲が広範囲となることにより手術リスクは上昇する.さらに,広範囲TAAでは動脈硬化病変が強く,血管性状が不良なため,脳梗塞とSCIの発生率が高いことが報告されている760).手術適応は大動脈破裂のリスクと手術のリスクのバランスにより決定されるため,広範囲TAAでは慎重な検討が求められる. 1.4.2 血管内治療 広範囲TAAにおいて,脳循環に関わる弓部に対する手術操作と,横隔膜を挟んだTAAAへの手術操作とが必要になる場合,一部または全部にステントグラフト(SG)を用いて低侵襲化を図ることがある.この場合,人工血管置換術やSG内挿術(TEVAR)の手術手技は個々の手技と同じであり,許容できる手術侵襲とTEVARに必要な解剖学的要件のバランスをとりながら手術戦略を考えることになる. 上行大動脈と腸骨動脈にlanding zoneを設けることができるのであれば,すべての大動脈をTEVARにより治療することは理論上,可能である.しかし,上行大動脈径が40 mm以上に拡大している場合には,大動脈のbandingや上行大動脈置換を考慮する.上行大動脈の拡大が弓部の拡大に連続していれば,上行弓部置換を行ってETやオープンステントグラフトを留置し,下行大動脈や胸腹部大動脈に対するTEAVRの中枢側landing zoneとして利用する.この場合,上行大動脈や弓部大動脈の瘤化自体は手術適応径(55 mm以上)に達していないこともありうるが,脳保護を要する弓部置換を避けるために上行置換を行う,あるいは左開胸による弓部手術の高い手術侵襲を考慮して正中切開による弓部置換を行う,といったバランスの中で適応を考えることになる. 広範囲TAAにおいてハイブリッド手術を選択する場合,下行大動脈に対するTEVARが重視される.これを胸腹部大動脈まで延長する場合には,分枝付きSGを用いれば完全血管内治療が可能であるが,デバイス自体が本邦では承 認されていない.腹部分枝に対するバイパス術を併用してTEVARを施行することは可能である. 弓部大動脈に対する手術操作による脳梗塞や,胸腹部大動脈に対する手術操作によるSCIのほか,個々の手術に関連するさまざまな合併症が考えられるが,広範囲の手術操作では総体としてそのリスクが高まる. 2 腹部大動脈瘤 2.1 内科治療と侵襲的治療の適応 表22 腹部大動脈瘤の内科治療とフォローアップの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 禁煙を指導する271–273, 311, 761–764). I A小径(<40 mm)の瘤に対し腹部エコー法によりフォローアップする765). I B収縮期血圧130/80 mmHg 未満を目標とした厳格な血圧管理を行う763, 766). I C CT または腹部エコー法によるフォローアップを以下のように行う765, 767).最大短径50~55 mm未満では3~6ヵ月ごと最大短径40~50 mm 未満では6~ 12ヵ月ごと最大短径30~40 mm 未満では1~2 年ごと (表68,P. 174 を参照) I B フォローアップ時に瘤径拡大速度≧ 5 mm/ 半年を認める場合に侵襲的治療を考慮する765, 767). IIa C 非解離性AAAは原則として無症状であり,健診などで偶発的に診断されることが多い.また,腹部の拍動性腫瘤で気付かれることもある.AAAの治療方針はその最大径によって決定する必要がある.大動脈瘤は,一度発生すると拡大を続ける傾向にあり,破裂症例では病院に救急搬送されても8割以上が救命不能である265, 266)ため,無症状の状態で診断・治療を行うことが重要である. AAAに対する内科治療の目的は,瘤の拡大・破裂の予防と,動脈硬化に関連した心血管イベントリスクの低減である.これまで,あらゆる薬物療法において大動脈瘤の拡