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p.75 抽出テキスト

いての手技となる.緊急対応の可能性(off-the-shelf)があるとすれば後者であり,分枝付きSGを用いてTAAA破裂の治療を行った結果,30日死亡率6%,SCI 6%と比較的良好な成績が報告されている742).しかし,世界的にみてもまだ普及には時間がかかる.その他,既存のSGと小径の長いカバードステントを組み合わせたサンドイッチ法により,TAAA破裂に対しきわめて良い成績が得られている743).本邦においては小径のカバードステントが認可されたが,大動脈瘤に対しては適応外使用となる.

そこで,開腹して腹部分枝をより末梢の血管よりバイパスしたのちにSGを挿入する(腹部debranch)ハイブリッド治療が選択肢となる.しかしながら,腹部debranch自体,侵襲度が高く,待機例においても外科手術に対する優位性は明確となっていない744).破裂においては腹部debranchに時間を要するため,疼痛のみの切迫破裂例ではまだしも, CT検査で血管外血腫が確認できる破裂になると成績は不良であり745),ショック症例は適応外である.

1.4 広範囲胸部大動脈瘤

1.4.1 外科手術

広範囲TAAの定義は定まっていないが,本項では弓部大動脈から下行大動脈または腹部大動脈に至る非解離性TAAと定義して,手術適応と手術術式を記載する. a. 開胸部位

解剖学的制限から,胸骨正中切開では弓部から遠位弓部大動脈が一般的な手術範囲となる.また,TEVARを組み合わせることにより,下行大動脈への手術介入が胸骨正中切開から可能となる.一方,左開胸では遠位弓部から下行大動脈さらに後腹膜アプローチを追加することにより,胸腹部大動脈が手術範囲となる.胸骨正中切開と左開胸アプローチを組み合わせて広範囲TAAの手術を計画することになり,解剖学的制限と患者の耐術能を考慮して,一期的手術または段階的手術を計画する. b. 一期的手術

一期的手術では,胸骨正中切開,胸骨正中切開+左開胸,左開胸の3種類のアプローチから選択できる.手術操作からは,胸骨正中切開では通常の人工心肺操作,低体温導入が可能であるが,下行大動脈への末梢側吻合には高い手術技術が必要であり,種々の吻合法が報告されている600).

胸骨正中切開による弓部手術にオープンステントグラフトを組み合わせた術式は,下行大動脈への手術介入が可能であり,手術侵襲を軽減する術式であるが,SCIや脳梗塞の発生率上昇が報告されている380, 746, 747).JCVSDの2015~2016年次報告では非解離大動脈瘤手術でSCIの発

生率は,弓部置換術(n=2938)で2.0%に比して,ハイブリッド手術で(n=958)5.4%であり,オープンステントグラフト使用では常にSCIに留意が必要である711).オープンステントグラフト法は1996年にKatoら749)により臨床成績が報告され,elephant trunk(ET) 750)をステントで固定する術式のため,「frozen elephant trunk(FET)法」とも呼ばれている592, 746).本邦では2014年から市販のオープンステントグラフトが使用可能となった.

胸骨切開+左開胸のアプローチでは,弓部から下行大動脈全長を露出でき,確実な手術操作が可能であるうえに,通常の人工心肺操作が可能であるという利点があるが,左開胸を加えることにより手術侵襲は大きくなり,呼吸器合併症の発症率が上昇する751).アプローチとして以下の方法などが用いられている.1胸骨正中切開+左開胸:胸骨正中切開に左開胸を加えて下行大動脈末梢側吻合を行う.下行大動脈内に人工血管を走行させるpull-through法752),下行大動脈を空置する術式がある753).2胸骨部分切開+左前側方開胸:胸骨上方部分切開と左前側方切開を組み合わせたL字開胸(ドアオープン)法754, 755),胸骨下方部分切開と左前側方切開を組み合わせたALPS(antero-lateral partial sternotomy)法756),左前側方切開に胸骨横切を組み合わせたクラムシェル法757)などが用いられる.

左開胸アプローチにおいても,頭側に開胸範囲を広げることにより心嚢内操作は可能であり,弓部大動脈への手術介入は可能である.左後側方開胸による弓部から下行・胸腹部大動脈置換術は報告されている758). c. 段階的手術

段階的手術は,それぞれの手術のリスクと侵襲度の軽減に有用と考えられるが,第2期手術待機中の大動脈イベントのリスクが常に懸念される.基本的には胸骨正中切開による弓部大動脈置換術を初回手術とする.この際,ETやFETを使用して,第2期手術に備えることが一般的である.第2期手術では左開胸による下行大動脈置換術や,胸腹部大動脈置換術を施行するが,下行大動脈へのTEVARで手技を貫徹できる症例も多い.また,弓部置換術+FETではSCIのリスクが上昇するため746),弓部置換術+ETを初回手術として施行し,第2期手術をTEVARで貫徹する方法も施行されている. d. ハイブリッド手術

従来の人工血管置換術とTEVARを組み合わせた術式が,ハイブリッド手術として認知されている.Bavariaら605)はハイブリッド手術を,上行大動脈中枢側から弓部3分枝をバイパスし弓部大動脈にTEVARを施行するtype 1,上行大動脈を人工血管に置換し,ここから弓部3分枝を再