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p.72 抽出テキスト

死亡例11例(7%),病院外死亡例83例(53%)であった.破裂部位は上行大動脈81例,弓部23例,下行45例,不明9例であった.また,症状出現から6時間以内の死亡が54%,7~24時間22%,それ以降24%であった. b. 破裂の危険因子

TAA破裂の予測因子として,古典的指標である瘤径が挙げられる.60 mmを境界に破裂の可能性が高まる535, 635).弓部大動脈に関しては,年に5.5 mm以上の拡大速度が破裂を予測する因子として抽出されており,さらに瘤径65 mm以上,高脂血症が拡大速度の増加に影響する713).ただし,多くは後ろ向きの研究であり,大規模な研究が少ないため,エビデンスレベルが低いのが現状である714). c. 診断

心嚢,縦隔,胸腔への穿破は致命的であり,患者は救護者との意思疎通を図るまでもなく,発症現場で頓死する.それ以外の生存例では,突然発症する胸背部痛や意識障害が主な症状となる.また,気管や食道などへの瘻孔が形成された場合には,喀血や吐血を生じる.呼吸不全は,胸腔内への出血の結果として生じる場合もある.総じて,破裂に特異的な症状はなく,疑いをもつことが重要となる.破裂が疑われた場合には単純および造影CT検査が必須である.治療方針決定のうえでも,CT検査の撮影範囲は胸部だけでなく,腸骨領域まで範囲を広げて撮影することが重要である96).意識障害を認める場合は頭部の同時撮影を行う. d. 治療

救命目的の緊急手術が必須となる.TEVAR/EVARが確立された現在でも,基部から弓部にかけての破裂の治療は外科手術が標準である.破裂部を含む,瘤化した大動脈すべてを人工血管に置換することが望ましいが,救命が最優先であるゆえ,術前の血行動態や呼吸状態,併存疾患の有無,年齢,あるいは術中の所見などにより置換範囲を勘案するべきであり,置換範囲の予防的拡大に固執する必要はない.

TAA破裂に対して,TEVAR 708, 715)あるいは,外科手術とTEVARを組み合わせたハイブリッド手術の報告709, 710)も存在するが,上行から弓部大動脈に及ぶ範囲にTEVARを行う場合には,頚部分枝への血流を何らかの方法で維持する必要がある.また,エンドリークが生じた場合,破裂孔から出血に至る可能性も考慮する必要がある.術前の血行動態が破綻している場合または悪化しつつある場合には,直ちに経皮的体外循環の開始,あるいは早急な開胸による破裂部の用手圧迫などが求められる716).近年では,TEVARによりいったん出血のコントロールを行った後(ブリッジ使用),開胸に至る方法717)も報告されている.患者の病態に応じた初動対応が肝要であることは論を待たない. e. 部位別の手術術式i. 大動脈基部

大動脈基部の破裂は,先天性バルサルバ洞動脈瘤または大動脈弁輪拡張症が主たる原因である.先天性バルサルバ洞動脈瘤は,主に心腔内に破裂することが多く,心嚢内への破裂の報告はきわめて少ない718).右冠洞より発生することが多く(約60~80%),次いで無冠洞で(約20%),左冠洞からはまれ(約1~10%)である719, 720).破裂先は右心系が多く,左右短絡を形成することにより心不全を発症するが,症状の程度は短絡量や罹病期間により変化する.

治療は外科手術が原則である.破裂した洞の位置,破裂孔の大きさ,短絡先,さらには大動脈弁尖の異常,大動脈弁閉鎖不全症の存在,先天性心室中隔欠損症の有無などによりアプローチを選択する.大動脈,右心房,右心室あるいは肺動脈のいずれか1ヵ所または2ヵ所を切開して,破裂孔の直接閉鎖またはパッチ閉鎖を行う.大動脈または右心房切開のみで破裂孔の修復が可能な症例も存在するが,一般的には2方向からアプローチすることが多い719, 720).大動脈弁尖の異常や大動脈弁閉鎖不全症が存在する場合には,大動脈基部置換術,大動脈弁置換術に破裂孔の閉鎖,VSRRなどの方法が選択される.破裂孔閉鎖の際には,瘤の再発,大動脈弁閉鎖不全症の発生,刺激伝導系の障害に注意が必要である.手術の成績は早期,遠隔期ともに比較的良好であるが,遠隔期の大動脈弁閉鎖不全症の発生721),瘤の再発や破裂722),房室ブロックなどが報告されており,注意を要する.

近年では,心室中隔や動脈管閉鎖用のoccluderを用いて破裂部を経カテーテル的に閉鎖する方法が報告され,その成績も比較的安定しているため,重症患者においては有意義な選択肢となりうる723).一方,10 mm以上の破裂孔に対しては無効例もあり,また,固いoccluderがバルサル

表19  大動脈基部~弓部大動脈瘤(非解離)破裂に対する

開胸手術の成績置換範囲症例数手術死亡数手術死亡率(%)基部95 19 20.0上行116 21 18.1基部~弓部10 5 50.0弓部214 43 20.1合計435 88 20.2 JCVSDの2015年1月~2016年12月のデータによる(志水秀行ほか.2019 711)より抜粋)