GL検索 v0.1.0
画像は 71 ページを描画したものです
page 71

p.71 抽出テキスト

心臓の圧迫など),さらに食道などとの交通をもつ大動脈消化管瘻,感染瘤は,TEVARの適応外である684–686).喀血を伴う気管支瘻,肺瘻に関しては決して良い適応とはいえないが,外科手術の成績が不良であり,TEVARが用いられていることが多い684, 685, 687).

下行大動脈瘤に対するTEVARでは,十分なlanding zoneを得るために,10~50%の割合で左鎖骨下動脈をカバーする必要があり,脳脊髄障害や上肢虚血の発生率は上昇する.少なくとも開存している左内胸動脈がある場合や,左椎骨動脈が優位である場合には,左鎖骨下動脈への血行再建が推奨される370, 371, 636, 688–692).十分なlanding zoneを得るために腹腔動脈を安全にカバーするのは有効だが683),そのためには造影CTで解剖を把握することが重要である.腹腔動脈をカバーする場合,事前または術中に血管造影で腹腔動脈と上腸間膜動脈の交通を確認するべきである693).側副血行路が十分にない,門脈血流が乏しい,腹腔-腸間膜動脈共通幹であるような場合,腹腔動脈閉塞は禁忌である.そのようなときはスキャロップを作成したデバイスを用いたり,snorkel,chimneyと呼ばれるテクニックが用いられたりするが,それらが安全,有用であるというデータは乏しい532). d. 胸腹部大動脈瘤の血管内治療

外科手術は依然として心肺循環障害,腎障害,対麻痺を含む神経障害などの問題があるため,それに代わる2つの方法が現在普及しつつある.

一つはハイブリッド治療と呼ばれる方法で,非解剖学的バイパスによって腹部分枝をバイパスし,その後にステントグラフト(SG)内挿を行うものである.バイパスとSG内挿を同時に一期的に行うか,分割して段階的に行うかは議論の分かれるところである.一期的では死亡率,腎障害発生率が高く,段階的では待機中の破裂のリスクがある694, 695).瘤径によって待機期間を考慮する必要があり, 60 mmを超えている場合は数日以内に行う696).高リスク患者に行われているという背景を考えると,このハイブリッド治療の死亡率,SCI発生率は比較的良好で697–699),腹部分枝バイパスの遠隔期開存率も良好である700, 701).しかしながら,この方法も侵襲度は決して低くなく,海外では次に述べる完全血管内治療が広く行われるようになり,ハイブリッド治療は緊急症例でデバイスが間に合わないときのみの選択肢となっている532).一方,本邦では認可された分枝付きSGはないため,ハイブリッド治療は現在においても外科手術の適応のない高齢者やCOPD患者などにおける重要な選択肢となっている.

もう一つの新たな手技は,分枝付きSGを用いた完全血管内治療である.傍腎動脈AAAの治療として開窓型デバイスが良好な成績を収めた702)ことから,ハイブリッド手術

室の登場,画像イメージ技術の向上とともに,この方法は発展してきた.RCTがなく,より高リスクの患者に対しては血管内治療が行われるため,30日死亡率,SCI発生率ともに現段階では外科手術との間に有意差はない703–707).本邦では認可デバイスがなく,限られた施設においてのみ施行されている.

1.3 胸部大動脈瘤破裂

1.3.1 大動脈基部,上行・弓部大動脈瘤

表18 大動脈基部と上行・弓部大動脈の大動脈瘤破裂の治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

治療適応があれば緊急手術を行う96). I C瘤破裂が疑われる症例では,全身(頚部から鼠径部までを含む)の非造影または造影CT 検査を行う96). I C専門的技術の提供が可能な施設で行われる場合,解剖学的要件を満たせば,外科手術よりもTEVAR を選択する96, 708). I C遠位弓部大動脈瘤破裂に対する全弓部置換術において,frozen elephant trunk 法の併用を考慮してもよい709, 710). IIb C Japan SCORE を用いた手術リスクの予測を考慮してもよい711).注: 臓器保護法(低体温循環停止,脳

灌流など),フレイルなど,リスク予測モデルに含まれない項目があり,手術死亡などの予測結果が実際の結果と解離する可能性がある. IIb C

a. 背景と疫学

本邦には非解離性TAAの破裂に関する疫学的統計は存在しない.2015年と2016年を対象期間としたJCVSDの胸部大動脈手術の報告711)では,胸部大動脈手術(胸腹部大動脈手術を含む)35,427例のうち,非解離性大動脈瘤破裂は1399例で,そのうち基部から弓部までの範囲の外科手術は435例存在した(表19).国外からの報告として, 1980年代のスウェーデン,ストックホルム市での2時点観察調査712)が存在する.この報告ではTAA破裂の発症率は人口10万人に対して5件と推計されている.1980年82例, 1989年76例のTAA破裂が発生し,計158例のうち手術が行われた症例は2例であった.158例のうち生存して救急外来に搬送されたのは64例(41%)で,老人福祉施設での