p.69 抽出テキスト
(すなわち,第6肋骨の下)から始まって腎動脈より上で終わり,腎臓下の大動脈を温存する.このV型は,オリジナルのCrawford分類では,I型(腎臓下の大動脈を温存するという点で)またはIII型(近位胸部下行大動脈を温存するという点で)のいずれかに分類されていた.V型の置換術後では脊髄合併症のリスクが低いと報告されている657). Crawford分類はいくつかの重要な機能を果たしている.すなわち,TAAA手術に関連するリスクは置換される大動脈の部位と置換範囲に依存する.そのため,この分類を用いることで,適切にリスクを評価し,大動脈置換術の予想される処置の程度に従って外科的アプローチを計画し,特定の治療法を選択するための枠組みを提供することが可能である.この分類を用いて大動脈瘤疾患の範囲を説明することに関しては,国際的な合意が得られている.外科手術とTEVARの両方において,この分類は処置の程度,手術に伴う技術的課題,および潜在的な術後リスクの指標を提供する.さらに,5つのタイプはそれぞれ,対麻痺,腎不全,および腹部臓器虚血などの異なる臓器合併症とも関連している. ii. 適応 瘤径が60 mmを超える(遺伝性結合織疾患は除く),瘤径の急速拡大(≧5 mm/半年),または症状を伴う,および低~中程度の外科的リスクを有する場合に,TAAAは外科手術の対象となる649, 660). 手術介入によるTAAAの破裂のリスクを評価することはきわめて重要であり,特に併存疾患のある患者における広範囲TAAAの術前リスク分析は,手術手順を決定するうえでも必須である. iii. 標準的術式 第5~6肋間開胸から腹部に至るspiral incision下に到達する.横隔神経の温存目的に横隔膜を弧状に切離し,腹部大動脈へは後腹膜腔あるいは経腹膜的にアプローチする.従来は広背筋,前鋸筋切開の後側方開胸で到達する方法が一般的であったが,最近は脊髄への側副血行路による血流温存目的に広背筋,前鋸筋温存アプローチも報告されている661).大動脈再建法は末梢側から再建する報告662)もみられるが,通常は中枢側から脊髄虚血時間を短縮するため分節遮断法663)を用いて再建する.本邦では肋間動脈や腹部分枝動脈は,8 mmまたは10 mmの小口径人工血管を用いて個別に再建する方法が一般的である.肋間動脈再建は人工血管を用いて個別または複数本を再建するか,あるいは人工血管を用いず直接個別に再建するか,複数本を島状に一括再建する664).Marfan症候群においては遠隔期に肋間動脈の島状再建部の動脈壁に瘤形成を認めることが多く,個別再建を原則とする665). iv. 補助手段 近位下行大動脈遮断は心臓への前・後負荷を増加させ,逆に遮断の遠位部は循環がなくなり,脊髄,腹部臓器,腎臓,下肢などの虚血合併症を生じる.単純遮断下の再建も可能であるが,一般的には以下の体外循環で遠位側大動脈灌流を施行し,臓器の虚血性合併症を減少させる.1大腿静脈(右心房)脱血-大腿動脈送血バイパス(部分体外循環),2左心房脱血-大腿動脈送血バイパス(左心バイパス),などを使用することで,臓器虚血予防が可能である649, 666).本邦では不測の大出血や低酸素血症への対応の点で,1の利用率が高い.両者の違いは,例外はあるが人 図55 胸腹部大動脈瘤の人工血管置換範囲によるCrawford 分類の修正版 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ●●●●●● ●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●● ●●●●●● ●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●● ● ●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●● ●● ●●●●●●●●●●● ●●●● ●● ●●●●● ●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●● ●● ●● ●●●●●●● ●● ●●●●●●●●●●● ●●●● ●● ●●●●● ●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●● ●● I型II型III型IV型V 型