GL検索 v0.1.0
画像は 65 ページを描画したものです
page 65

p.65 抽出テキスト

ている.弓部分枝の再建は,以前は島状再建も行われたが,弓部分枝分岐部に動脈硬化性病変が多く,かつ止血が容易なため,現在は弓部大動脈手術用にデザインされた分枝つき人工血管を用いて弓部分枝を個別再建する597).

標準的な補助手段であるSCP下での吻合順は,最初に大動脈末梢吻合を行って弓部以遠の循環を再開させ,中枢吻合,弓部分枝の順に再建するが,左鎖骨下動脈を中枢吻合の前に行うことも多い.また,胸腔内で左鎖骨下動脈を再建せずに,別の皮膚切開で露出した左腋窩動脈に分枝グラフトを吻合する方法もある.RCPの場合は脳保護時間の制限があるため,先に弓部分枝を再建し,末梢,中枢の順に吻合するarch first techniqueが用いられる601, 602).末梢吻合(下半身循環停止)中の深部体温(膀胱温または直腸温)は,以前は20°C以下のdeep hypothermiaが主流であったが,最近は25~28°C程度のmoderate hypothermiaが多く行われるようになった603). b. 血管内治療表14 非破裂性弓部大動脈瘤の血管内治療の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

外科手術が高リスクの症例には,開窓型ステントグラフトを使用したTEVAR604),分枝再建を伴うTEVAR(ハイブリッドTEVAR)379, 605, 606),またはin situ 開窓術を用いたTEVAR607–609) を考慮する.

※ IIa C

外科手術が高リスクの症例には,chimney 法を用いたTEVAR を考慮してもよい610, 611). IIb C外科手術が低リスクの症例には,ハイブリッドTEVAR は推奨されない612, 613). III B ※ ‌in situ開窓術を用いたTEVARの適応は,外科手術が高リスクの症例に限り,

TEVARならびに大動脈分枝血管のカテーテル治療に熟練した施設・術者においてのみ行われるべきである. i. ハイブリッドTEVAR

弓部大動脈瘤に対するTEVARは,屈曲部への留置による術後エンドリークの懸念,頚部分枝の血流確保という観点から,通常のTEVARのみでは対処できない症例が多い.弓部大動脈瘤治療の第一選択は全弓部置換術であり,高齢あるいは外科手術が高リスクの症例に限りTEVARが考慮される.TEVARを行う場合,landing zoneの確保のために閉鎖する頚部分枝に非解剖学的な経路でバイパス血行再建を施行した後にステントグラフト(SG)を挿入する方法が用いられる.それらはハイブリッドTEVARと総称される379, 605, 612–619)(図54).

ハイブリッドTEVARはtotal debranching TEVARとpartial debranching TEVARに二分される.total debranch- ing TEVARは,胸骨正中切開下に弓部3分枝すべての再

建を行い,SGで瘤を空置する方法である.主なinflowとして上行大動脈が使用されることが多いが,性状が悪い場合は上行大動脈置換術を先行させることもある.partial debranching TEVARは,開胸操作が必要となることが少なく,主に腕頭動脈以外の頚部分枝再建(頚動脈-頚動脈-左鎖骨下動脈バイパスなど)後にSGで瘤を空置する方法である.頚部分枝のdebranchingの際には,上行大動脈の部分遮断や頚動脈遮断,さらに粥腫のある血管へのlandingに伴う手技や塞栓症により脳梗塞を発症することがある379, 407, 620).このため,鎖骨下動脈のみのカバーで治療可能な遠位弓部大動脈瘤に比べ,周術期の脳梗塞と逆行性A型大動脈解離の発症率は高い620).

全弓部置換術との比較では,ICU滞在期間,在院日数はハイブリッドTEVARが有意に短いが,エンドリークに伴う再治療率は高い606, 621).しかし一方で,ハイブリッドTEVARの方が高リスクで高齢の患者が対象であったにもかかわらず,死亡率や脳梗塞を含めた周術期合併症の発症率はリスクの低い患者に対する全弓部置換術のそれと同等であった606, 621).

partial debranching TEVAR とtotal debranching TEVARの比較では,partial debranchingの方が中枢landing zoneが短いためエンドリークの発生率は高いが,侵襲度は低い622).また,partial debranching TEVARは,体外循環非使用下で大動脈瘤の治療ができるため,侵襲度が低く,ICU滞在期間,在院日数を含めたQOL向上に貢献しており,より高リスクの患者に対して第一選択となりうる. ii. 完全血管内治療

近年,TEVARのメインデバイスを粥腫の少ない上行大動脈に留置し,カバードステントを用いて腕頭動脈,左総頚動脈を再建する完全血管内治療(totally endovascular TEVAR)が注目されている.完全血管内治療の術式として,chimney法,開窓型SG,in situ開窓術,企業製の分枝付きSGが挙げられる. 1  chimney法:通常のSGと平行に上行大動脈に向かって

頚部分枝からカバードステントを留置し,頚部分枝の血流を確保する術式である623, 624).しかしながら,SG間からのガターリークが発生することがある.ガターリークはtype Iエンドリークと同等であり,ガターリークを含む約11%にtype Iエンドリークが生じるとの報告がある610, 611).また,死亡率は4%と低い傾向にあるが,脳梗塞発症率11%,chimney法後の再治療率は10~ 25%と高く,外科手術が追加される症例も少なくない610, 625).このため,完全血管内治療の中では第一選択