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p.62 抽出テキスト

は,上行大動脈瘤では60 mm,下行大動脈瘤では70 mmで急激に高くなるhinge pointが認められた(図53) 535).大動脈径や断面積を身長で除した係数(≧4.35 cm/m,≧10 cm 2/m)が上行大動脈瘤・拡大症例で大動脈イベントの危険因子であることが報告されており535a, 535b),女性の成績不良への関与も示唆されるので,低身長の患者では早めの介入を検討する.

遺伝性大動脈疾患には,Marfan症候群,Loeys-Dietz症候群,Ehlers-Danlos症候群,家族性胸部大動脈疾患,先天性大動脈二尖弁などがあるが,治療適応となる大動脈径は組織脆弱性に応じて小さくなる.形状では,紡錘瘤に比べ嚢状瘤が破裂しやすいため,CT検査など画像診断で形状を見て適応決定やフォローアップ時に参考とする.一方,瘤径拡大速度はTAAで5 mm/年未満だが,瘤径の拡大とともに速くなる.半年で5 mm以上拡大する症例では破裂しやすく,フォローアップ期間を考慮するうえで参考にされたい.たとえば,50 mm未満なら半年後にCT検査を再施行し,半年で拡大がなければ年1回のチェックとする.しかし,上記の基準に達しなくても破裂する症例がある.関与する要因として,激しい運動や精神的ストレス,季節や時間帯,高血圧の日内変動,睡眠障害などが明らかとなっている.TAAは睡眠時無呼吸の存在により拡大率が大きくなる.これら要因の影響によって適応基準が必ず

しも適切でなくなる可能性もあり,フォローアップの際に治療できる要因は治療し,啓発が有効なものに関しては患者教育などで「回避しうるイベント」を回避する努力も必要だろう.

治療成績の向上に伴い,より小さい瘤径であっても侵襲的治療の適応となる.日本胸部外科学会の2016年の年次報告によると43),非解離性大動脈瘤の手術症例では,院内死亡率が2.9~6.9%(上行~胸腹部大動脈,TEVARを含む)であり,破裂のリスクがこれを上回る場合を治療の適応とするのが一般的な考えである.しかし,これらはあくまで統計的なもので,手術のリスクは個別に判定されるべきである.近年ではデータベースへの登録がほぼ100%になってきたことに伴い,背景因子から手術リスクが算出できるようになってきている.患者の高齢化に伴い,既往歴,服薬歴,フレイルなどが手術リスクを高めうるため,大動脈がより小さいうちに,より低侵襲な治療法を選択するなどの検討も必要となる.

1.2 非破裂性胸部大動脈瘤

1.2.1 大動脈基部・上行大動脈瘤

表12 大動脈基部・上行大動脈の非破裂性大動脈瘤の外科手術の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

無症状の非解離性大動脈瘤,IMH, PAU,感染瘤,仮性瘤では,最大径≧ 55 mm,または<55 mm であっても拡大速度≧5 mm/ 半年の場合は行う384). I C Marfan 症候群(表49,P. 141 を参照)

最大径≧50 mm に行う536). I C最大径≧45 mm,かつ大動脈解離の危険因子

*を有する場合に考慮する536). IIa C妊娠予定の女性では最大径≧40 mm で予防的に行うことを考慮する537). IIa C最大径40~45 mm,かつ大動脈解離の危険因子

*を有する場合に考慮してもよい536). IIb C大動脈二尖弁に伴う大動脈瘤(表52,P. 145 を参照)

最大径≧55 mm に行う538–542). I C

図53 胸部大動脈瘤の瘤径と解離や破裂などの合併症の発症率(Coady MA, et al. 1997 535)より) Copyright (1997) Mosby-Year Book, Inc., with permission from Elsevier. https://www. sciencedirect.com/journal/the-journal-of-thoracic-and-cardiovascular-surgery

上行大動脈瘤の瘤径 (cm)

(%) hinge point at 6.0 cm (p = 0.005)

hinge point at 7.0 cm (p = 0.006)

40 30

20 10

0 0 4 5 6 7 8

下行大動脈瘤の瘤径 (cm)

50 40

30 20

10 0 0 4 5 6 7 8

合併症発症率

(%)

合併症発症率